今回のUAV通信、テーマは「マイクロドローン上達法 初心者におすすめのホバリング練習」です。
中村:この映像は、マイクロドローンのホバリング練習の風景ですね。マイクロドローンの経験者もいるし、今日初めて飛ばす生徒もいます。こうしたマイクロドローンを、フリークスガレージでは練習に使っています。
嶋貫:マイクロドローンというとおもちゃに見られがちですね。おもちゃのドローンとの違いは、具体的にどう説明すればいいでしょうか?
中村:まず、マイクロドローンはトイドローンじゃないです。生徒の持っている送信機を見てください。本格的な「FUTABA社」の送信機を使っていますよね。プログラムが書き換えられるので、非常に正確に飛びます。あと、いろいろなモードがあります。すごい簡単に飛ばせる、ちょっと簡単、難しいなど、そういう変更もできます。
マイクロドローンを練習に使っている理由は、マルチコプターの基本的な操作をシンプルに練習できるからです。機体は、小さくて柔らかいです。だから家で練習ができる。これが非常に大きなメリットです。
嶋貫:マイクロドローンの操縦がうまくなるとどんないいことがあるでしょうか?
中村:マイクロドローンが自由自在に飛ばせれば、マルチコプターを意のままに操れます。例えば、GPSが切れたときや強い風が吹いてきたときも、慌てずに機体をコントロールできます。よく、「今どきのDJI製の機体なら、GPSが切れたりおかしな飛び方をするわけないじゃん」という人がいます。そういう人は、飛ばす回数がめちゃくちゃ少ないんですよね。私たちみたいにしょっちゅう飛ばしていると、いろいろな場面でGPSが切れたり、突風に流されたりします。そんなときこそ機体を自由自在に操れないと、墜落や事故を起こしてしまいます。
中村:マイクロドローンは、最初はとにかくホバリングができればいいんですよ。
嶋貫:ホバリングといえど、初めてやる生徒さんは苦戦しますよね。高さを安定させるだけでも大変です。
中村:そう、だからこそ、スティックから指を離さない習慣をつけるにも最適です。指を離すと、機体はどこかに飛んでいっちゃいます。
中村:今、映像に映っている生徒さん、「三軸ジャイロ」にして、一番難しいモードで飛ばそうとしています。
嶋貫:これは具体的にどういうモードと説明できますかね?
中村:まず、一番簡単なモードは、スティックを倒しても、機体が傾く範囲は限界があります。そのままスティックを倒し続けても、機体がひっくり返ったりしません。スティックをもとに戻せば、機体も水平に戻ります。
「三軸ジャイロ」の一番難しいモードだと、スティックを戻しても、機体は傾いたままなんですよ。しかも傾ければ傾けるほど、機体は回っちゃう。宙返りしてしまう。スティックを戻しても、機体は水平に戻らないんですよ。水平に戻す操作をしないといけません。正確にスティックで制御しないと、きちんと飛ばないんですよね。
嶋貫:「DJI」の機体などは、非常にいい高さ制御が付いています。しかし、それも条件によっては使えなかったり十分に働かないことがあります。そういうときに、マイクロドローンで身につけた技術が役に立ちますね。
中村:そう、私も経験があります。強い風の中、高さを変えずに飛ばさなくちゃいけないことがありました。風が吹くと機体がワーッと上がったり下がったりします。それをマニュアル(手動操縦)で、ピタッと高さを合わせて飛ばすというものです。最初、クライアントが自動航行でやろうとしたんですよ。でも、自動航行でやるとどうしてもダメ。いいデータが取れない。それで私が「飛ばしますよー」と言って、産業用のドローンをマニュアルで飛ばして。「えっ、自動航行より正確に飛ばせちゃうの?」と相手。「ええ、条件が揃えば自動航行より正確に飛ばせますよ(笑)」と。
嶋貫:(笑)。確かに自動航行は、使えれば使うに越したことはないですけどね。使えない状況のとき、それに対処できる技術がないと仕事ができません。それには、マイクロドローンの練習の積み重ねが大事ですね。
嶋貫:それで、マイクロドローンは家だったり室内や狭いところで練習ができるというメリットがありますが、逆に広いところではどう練習しますか?
中村:遠くの機体が、前か後ろかどちらを向いているのかを把握できるようになるといいですね。マイクロドローンは機体が小さいので、いくら体育館のような狭い空間でも、自分から離れると機体がどちらを向いているか分からなくなります。よく生徒さんが、「遠いとどちらを向いているか分かりません!」と言います。そういうときは、例えばエルロンを右に切ったり左に切ったりして、機体の動きで判断します。判断ができれば、機体が後ろを向いていても、すぐに前に戻すことができます。
嶋貫:私も講習中に、「機体がどちらを向いているか分からない。そういうときはどう飛ばすんですか?」と聞かれます。そんなときは、今の話のように、自分のスティック操作に対して機体がどう動くか、それを常に把握します。そうした判断を身につけるのにも、マイクロドローンの練習が非常に有効です。マイクロドローンは、送信機のスティック操作を体に染み込ませるにはすごくいいですよね。
中村:よく私は、電車の吊り革のような穴にマイクロドローンを通して遊んでいます。そういうやり方で練習すれば面白いんですよ。楽しみながらうまくなりますよね。
嶋貫:練習はどうしても地味になりがちです。楽しみながらやるにはピッタリですね。マイクロドローンは、いろいろな練習ができます。
中村:マイクロドローンを講習で使っているのは、いろいろな理由があります。正確な機体の操作ができる。家で手軽に練習ができる。楽しみながら上達できる。利点が多い。ただ、どうしてもトイドローンだとできないんですよ。最近はおもちゃでもよく飛びますが、限界があります。本格的な送信機で、細かい舵が入る機体じゃないと練習にならない。やっても意味がなくなります。皆さんも、そのあたりを気をつけながら、マイクロドローンで練習してみてください。