概要

●クライアント名:独立行政法人 水資源機構

●仕事時間:15分

●使った機体:INSPIRE1

●苦労したところ:撮り直しがきかない撮影だった。プロとして1カット(1回の離陸ですべてを撮りきる)での撮影を考えており、いかに焦らず操縦するかに注力した。しかし、暗くなる前に撮らなければというプレッシャーもあり、3箇所失敗してしまった。

●工夫した、うまくいったところ:夕方の時間をうまく利用したため、壮大なダムの広がりも手伝って、神秘的な映像が撮れた。上昇気流を考慮しながら、一定の速度を保ち、ゆっくりと撮影した。

●撮影秘話:場所は、埼玉県の秩父にある滝沢ダム。最大貯水量であるこの日この時間を狙っての撮影となった。撮影が夕方だったので、時間的にも1フライトしかできなかった。そこで、フライトプランを立て、すぐに飛ばした。

「音声解説」の文字起こし

これはですね、秩父にある「滝沢ダム」です。この映像は、実は、滝沢ダムができて初めての、最大貯水量になったときのものです。急遽、連絡をもらい、撮りに行きました。

映像を見ていると、一見、ドローンをふわーっと楽に飛ばしていますけど、湖面を見るとかなりざわついているように、風があるんですね。この辺に来ると(3:40)、すごい上昇気流が入ってきます。ダムって、思った以上に飛ばしづらい場所です。初心者の方が、よく「ダムを撮りたい」「ダムなら広くて簡単に撮れるんじゃないか」と言いますが、とんでもないです。

ダムはいろいろなことが起こります。慣れていないと事故につながります。事故の例を何例も知っています。

――気象条件が変わりやすいんですか?

変わりやすいというか、風もそうですし、ダム湖自体が鉄筋コンクリートなので、電波に対するいろいろな障害があったりします。

――この撮影では、クライアントさんからはどんな要望が?

このときは、「普段見られないような映像を撮ってくれないか」ということでした。滝沢ダムを管理するのは、(独立行政法人)水資源機構さんです。水資源機構さんと私は専属契約をしています。もし「今日は撮っておいたほうがいい」というタイミングがあれば、「すかさず飛ばしてもいい」という許可をもらっていました。

今映っているのが(5:17)、非常用ゲートっていう、緊急のときにしか開けないゲートです。それが半分以上、2/3も水が浸かっちゃってるんですね。こんなことはめったにおきません。あと2mでも水が上昇してしまえば、非常用ゲートを開けないとダメだというところまできています。非常に珍しい映像ですね。

――機体は、湖面から何メートルのところを飛んでいますか?

だいたい2~3mくらいですね。ゲートの向こう側が透けて見えるところまで撮りたかったので、かなり低くまで降ろしています。とにかくダムはいろいろな風が吹くので、気をつけなくちゃいけないですね。

今、この映像から分かるように(6:16)、ダムは周りが法面(のりめん)にあります。渓谷です。この斜面側にドローンの機体が近づくと、GPSがパーンといきなり切れます。GPSが切れても、ルートを外れないようきれいに操縦しなくちゃいけません。

あと、今この辺りで(6:40)風が下からワーッと吹いてきます。上昇気流が吹いてきます。上昇気流に対して、機体が一定を保って飛ぶよう調整しています。

この日は夕方だったので、ちょっと薄暗いです。それが逆に、いい感じの景色を演出をしています

すごいですよね、ダムって。コンクリートだけでこれだけの水を食い止めているわけですから。

この角度の映像ってなかなかないですよね(7:33)。船からでも撮れないですし。ヘリコプターだと、風で波紋が広がってしまいます。ヘリコプターでも難しい映像ですね

――このときは、何を考えながら飛ばしていましたか?

とにかくね、気がついた方もいるかもしれませんが、この映像は編集を一切してないんですよ。ノーカットです。ノーカットなので、もしドローンの機体がカクンと動いたりヒューンと加速してしまったら、その時点で動画としては使えないじゃないですか。なので、とにかく急な動作をしないように、ゆーっくり飛ばしています。まったくこれ、ノーカットですから。ワンカットですね。ワンカット、一発撮りです。

――ワンカット、一発撮りはよくあるんですか?

いやこれ、難しいですよ。これもやったことがある方は分かると思いますが、ワンカットで一発撮りは非常に難しいです。

――これは今(9:01)、どんな技術を使っているんですか?

横に移動しつつ、若干カメラを左にパンしながら、ゲートが映るように飛ばしてます。なので、ただの横移動だけじゃこういうふうには映らないです

すごいダムですよね。日本で3番目に大きいとか言っていたかな。けっこう大きいダムです

――この速度も自分で調節しているのですか?(9:43)

これは全部、マニュアル(手動)で操縦しています。自動航行ではありません。ここを通過する瞬間(9:55)、上昇気流に入って、機体がうわーーっと上がりそうになるんです。もし自動航行でやっちゃうと、上がってっちゃうんですよ。機体が。勝手に上がってっちゃうんですね。なので、自動航行だとキレイな絵が撮れないので、これは完全にマニュアルでやっていますね

――こういう景色を撮るときは自動航行の方が良い気がしますが、そうではないんですね?

マニュアルじゃないと撮れない絵がありますね。とくに、本当にゆっくり動かす場合は設定が難しいんです

――緩急をつけた動きは自動では難しい?

難しいですね。かなりきちんとプログラムを組まないといけないので。人間のスピード感でやるから、見ていて迫力があったり、手に汗握ったり、ほのぼのと見えたりとかね、そうなると思うんですけどね。

――ダムを撮るには、どのくらいの操縦レベルが必要ですか?

いろいろなことに瞬時に対処できる訓練をしておかないと、危ないですよね。

――すぐには難しいですかね?

これを飛ばしているときにも、1回、操縦用電波が途切れました。GPSは3回くらい切れました。

――不測の事態が起きやすい

そうですね。ですけど、不測の事態に怯んではいられないので。

――初心者だと、不測の事態が起きたら落としてしまうことは?

よくあります。そのまま風に乗ってどっかいっちゃうことも多いです。危ないですね。

――ダムで落としてしまったら終わりですか?

終わりです。くれぐれも、飲料水にも使うので機体は落とさないでくれと言われています。