コロナ渦の中、新たな仕事や収入源を求めて、ドローンの操縦に挑戦する人が増えている。しかし、ドローンの仕事の実態はあまり知られていない。嘘や誤解、間違いも氾濫している。果たして、その真相とは?

ドローンを操縦する仕事にはどんなものがあるか? 00:00

――本日は、ドローンの仕事についてお聞きます。ドローンを操縦する仕事にはどんな種類があるのですか?

中村一徳(以下省略):いろいろとあります。うちでよく請け負うのは、測量やスチール写真の撮影、動画撮影、設備の点検、物の輸送などです。それぞれ、必要な操縦技術はバラバラです。仕事に応じて操縦を変えなければなりません。

ドローンによる測量では、まず現場に行って、機体を自動航行させます。自動航行のためのプログラムを入力して飛ばします。自動でやろうと思えばできなくはありません。ただ、全部が自動かというと違います。全自動は、よほど条件が恵まれた現場でないとできません。

大体は地上でプログラムを組みます。まず、マニュアル(手動)で上空の安全なところまで機体を上げる。そして、自動航行用の命令を出し、自動航行させます。この間、プログラム通りに飛んでいるか、ずっと機体を見ています。プログラムが間違っていると障害物にぶつかったりします。測量が終わると、現場によってはリターントゥホーム(RTH)で、自動で戻すときがあります。

ただ、やり方は現場によって変わります。全部が全部、そのような流れで飛ばすわけではありません。うちの場合、作業が終わったら、よくその場でホバリングをさせます。そして、そこからはマニュアル(手動)で自分のところまで戻します。10cmの狂いもないところに着陸させます。着陸場所は、岩だらけだったりと平坦でないことが多いです。そこで、離発着用の平らなマットを置いたりして、そこに着陸させます。

ドローンによるスチール写真の撮影では、最初からマニュアル(手動)で操縦します。まずは自分の撮りたいと思うところまで飛ばします。そしてシャッターを押して、写真を撮ります。このとき、きちんと周りの状況を確認しながら飛ばさないといけません。そうしないと、ちょっとした障害物に機体をぶつけてしまいます。機体を壊さないためにも、自分で自由にコントロールできるよう、自動航行ではなくマニュアルで飛ばします。

ドローンによる動画撮影では、いろいろなやり方があります。理想は、すべてマニュアル(手動)で操縦して思い描いたとおりの絵を撮るということです。ただ、あまり操縦がうまくない人であれば、機体を自動航行で飛ばしながら、カメラの操作を手動ですることもあります。しかし、これは危険もあります。カメラ操作に夢中になり過ぎて、機体の確認がおろそかになりがちです。だから、まずは自動航行させてみて、綺麗な飛行ラインを描けるかどうか、どこにもぶつからないかどうかを試さなければなりません。いずれの方法でも、一緒に仕事をする人の数は多いほうがいいです。機体から目を離さないための助手がいれば安心です。助手がいればカメラ操作に専念できます。自動航行に頼りっぱなしは危ないです。

ドローンによる設備点検では、ほとんどマニュアル(手動)で飛ばします。また、FPV(ゴーグルをつけて画面を見ながら飛ばす方法)で点検していきます。これは、手動で細かい操縦ができないとできません。本当に難しいです。

ドローンによる物の輸送では、決まった場所から決まった場所へ機体を飛ばします。これも自動でできればいいのですが、マニュアル(手動)で飛ばすことが多いです。自動航行は危ないことが多いのです。

数を上げればキリがありませんが、ドローンの仕事には、いろいろな種類や飛ばし方があります。共通しているのは、マニュアル(手動)できちんと飛ばせる技術です。技術によりできる仕事は変わってきます。

ドローンの仕事は複数人でやることが多い? 05:53

――お話を聞いていると、現場では何人かで仕事することが多いみたいですね

1人でやることもありますが、理想は2人以上がいいです。できれば3人。1人が機体を操縦し、もう1人は機体を監視。もう1人は、周りの状況を監視する。これが理想ですね。

ドローンの仕事は一人でもくもくとやるものではない? 6:32

――そうなんですね。1人で仕事をするイメージがありました

公共の現場だったり人の出入りが多いところなどは、1人じゃダメです。ドローンを飛ばすということは危険が伴いますから。できれば3人で。

――自分で仲間を募って仕事をするんですか?

そうですね、仲間に声をかけることがあります。いつも組む相手を決めておくことが肝心です。もし気が合わない相手だと大変ですから。初めての人だと、けっこう難しいです。現場では、きちんとチームを組んでやります。さっと集まれる仲間がいたほうがいいですね。

ドローンの仕事を依頼してくるクライアントはどんな人たちか? 07:20

――クライアントさんはどんな人たちなんですか?

うちの場合ですと、測量会社から話が来ます。結婚式場や写真館など、いろいろな業種があります。映画撮影の話は役場の関係者だったこともあります。省庁から直に話が来るなんてこともありますね。うちは少し特殊です。

一般的には、仕事を受ける会社があります。そこから話が来るのではないでしょうか。「この現場で飛ばしてほしい」「こういうところで飛ばせないか?」といって。ただ、今はまだ世の中的に、仕事をこなせるドローンパイロットが少ないのが現状です。

ドローン・プロパイロットの年収は? 08:16

――ずばり、プロの年収はいくらくらいでしょうか?

ピンからキリまであります。月に数十万円くらいの人から、月に数百万円の人までいます。仕事内容によっては、もっともっと稼げます。月に一千万円近く稼ぐ方もいます。これは、やる仕事の内容によりますね。

ドローン・プロパイロットは正社員よりフリーランスが多い? 08:48

――フリーの人が多いのですか?

いや、そうでもありません。うちで育てた生徒さんの中には、社員として、企業で飛ばしている人もいます。月給をもらいながら。もしかしたらドローン手当なんかがついているのかもしれません。

もちろんフリーでやっている人もいますね。あとは、ドローン関係の会社に外注登録をして仕事をもらっている人なんかも。

ドローン操縦の仕事は副業でできるか? 09:46

――ドローンの仕事は、本業をやりつつ副業でもできるのですか?

う~ん、やろうと思えばできますが、最初は本業として専念した方がいいです。もし副業で掛け持ちしてやるなら、卒なく飛ばせる技術がないとできません。初心者の方ですと、最初から副業は難しいでしょう。別の仕事をしながら週に1回飛ばすみたいなやり方は現実的ではありません。できなくはないけど、よほど簡単な仕事しかできないはずです。

簡単な仕事は、ギャラもかなり安いです。内容的には、飛行許可もいらないような施設内でのスチール写真の撮影とかです。「この建物を撮ってください」「この風景を撮ってください」という依頼です。こういう仕事であれば、そんなにうまくない方でもできます。ただ、それなら施設内のスタッフでも、ちょっと練習すればできますので、わざわざ外注することは少ないでしょう。仕事の量も稼げる金額も少ないです。

また副業だと、もし難しい仕事を振られた場合、「できないから断らざるを得ない」ことがあるかもしれません。最初から副業だと、どうしても経験値が少なくなります。ドローン操縦は現場での経験がすべてです。簡単な仕事ばかりやっていても、いざ難易度の高い仕事が来た場合、対応できません。その場合は断らざるを得なくなり、相手の信頼をなくします。

ですから、私としては「副業でもできます」とは言えないですね。もし副業でやるとしたら、まずはプロの助手としてスタートするしかないでしょう。助手としてお手伝いしながら、機会があれば現場で飛ばす経験を積ませてもらう。そうして2~3年くらいかけて実力をつけて、ようやく独り立ち。独り立ちするまでは助手なので、手当も大したことはありません。年収で言えば、数十万円みたいな話です。このように、副業では一人前になるまで、そして稼げるまでかなり時間がかかります。本気でやるなら、あまりお勧めはできません。

ドローン操縦の仕事はすぐにできない? 12:46

――いずれにしても、ドローンの世界は、すぐに仕事ができるというものではないんですね?

そうですね。すぐにはできません。プロとしての心構えや知識、技術、なにより経験が必要です。どれくらい難しい世界か知ってもらうために、試しにうちで仮の仕事を出しますから、皆さんにやってもらいましょうか(笑)。体験すれば分かると思います。

ドローン操縦の仕事の求人はあるのか? 13:11

――簡単な仕事から難しい仕事まで、世の中的には、今募集はたくさんあるんですか?

募集はけっこうあります。例えば、不動産会社だと物件の撮影だとか。ただ、求人する企業側が、誰に、どういうところに頼めばいいか分かってないことが多いです。また、そもそもドローンをどういう問題解決に使えるかも分かってないことがあります。そのため、応募しても「あれっ?」と思うことがあるかもしれません。まだまだ需要と供給が整っていないようです。

だから、逆に自分から営業をかけてもいいと思います。「こういうドローン撮影をやってみませんか?」「ドローンをこういうことに使って、経費を削減してみませんか?」。こういう営業はありです。そうして、自分から仕事を作ることも可能です。

どんな営業をすれば、ドローンの仕事が取れるか? 14:11

――もし中村さんの元にパイロットが来た場合、どんなふうにPRされたら仕事を出してもいいなと思いますか?

今まで、どんなドローンの仕事をしてきたか聞きたいですよね。そして、撮った画像や動画を見せてもらいたいです。そうすればすぐに分かります。作品を見てOKだったら、その人のレベルに応じた仕事を、すぐにでも出します。ただ、仕事をお出しするのは、うちは会員さん限定です。どれくらいのスキルがあるか分かっていないと出せませんから。

仕事を斡旋するドローンスクールや講習団体は多いか? 15:06

――他に仕事を斡旋しているドローンスクールや講習団体はあるんですか?

どうなんですかね。広告を見るかぎりは「仕事を紹介します」と書いてありますが、私の周りでは「仕事を紹介してもらった」という話を聞いたことがありません。私も行って、仕事を紹介してもらおうかな(笑)。

――あまり実態がよく分からないんですね

よく分からないですね、どうなっているのか。そういうことに詳しい業界の人もいるので聞いてみようかな。私自身は、あまりそういう話は聞いたことがないですね。

ドローンの仕事をするのに必要な許可や資格はあるか? 15:51

――ドローンの仕事をする際に、何か許可や資格は必要になるのですか?

法律上、許可がいらないところで仕事をする分には、資格も飛行許可もいりません。例えば私有地で測量の仕事をする場合は、何もいりません。ただ、公共の場所や国道・民家が側にあるような場所だと、飛行許可が必要になります。

――飛行許可が必要とはどういうことですか?

ドローンを飛ばす際、国道や民家が側にあったりするときは、国土交通省に飛行申請をしなくちゃいけません。どんな機体を飛ばすのか、誰が飛ばすのかを登録して、飛行許可を取ります。

――それは簡単に取れるのですか?

あの……実は簡単に取れます(苦笑)。本来は、一定の基準を満たしたパイロットじゃないと取れないのが正解です。一定の基準というのは、10時間以上の飛行経験があるかとか、八の字をかいて飛ばせるかとか、そういったことです。やはりドローンは空を飛ぶ以上、危険なものなので、下手なパイロットに飛行許可を出して事故でも起こされたら大変です。そこで、「一定の基準を満たした飛行ができる」ことを、国に申請しなければなりません。ただ、これは自己申告なんですよ。だから、「一定の基準を満たした飛行」ができなくても、「できます」と申請すれば通っちゃう。

――その人が国に「できます」と申請すれば通っちゃうこともあるんですね?

“こと”もあるではなく通っちゃうんです! 間違いなく通ってしまう。それが嘘であってもね。嘘じゃなくても、3~4日練習したくらいでも通ります。しかし、3~4日で安全に飛ばせるスキルが身につくと思いますか? 例えば、自動車学校でも1ヶ月くらいかかりますよね。「いやそんなことない。うちのドローンスクールでは、3日でプロパイロットにできる!」なんてところがあれば訂正しますが……。もしかしたら私の講師としての教え方が未熟なだけかもしれませんが、数日で安全な飛行ができるレベルに育てるのは無理でしょう。

だからうちでは、「簡単に申請してはダメですよ」と生徒さんに言っています。うちのドローンスクールには「初級」「中級」「上級」とコースがあって、上級を合格するまでに平均1年くらいかかります。そのため、「初級」を合格したくらいでは、まだ飛行申請を取ってはダメです。飛行申請用の練習を、2~3ヶ月みっちりやってもらいます。「中級」合格後には、国土交通省へ申請しても恥ずかしくないスキルが身についています。それからなら、私も生徒が飛行申請を取るお手伝いができます。もちろん黙って勝手に申請したら、飛行許可は取れてしまいますが……。実際、過去に生徒で一人いました。そういう方は申し訳ないけれどもうちのスクールを辞めてもらいました。ドローンは危ないものなので、簡単に考えてはいけません。

――けっこう厳しいですね。それはどういう理由からですか?

飛行申請をする以上はプロですからね。「やっとできる」はプロじゃない。求められている操縦が楽にできなければ、プロとしてまったく通じません。申請で求められるスキルは最低レベルですからね。国土交通省が要求しているのは、すごいテクニックじゃありません。ものすごい簡単なことです。それを、ちょろちょろっとできなければ、現場じゃまったく通じないですよ。

あえて厳しくしているわけではありません。うちは、飛行申請を取った以上、そのとおりの飛行ができるパイロットを育てているだけです。当たり前のことをやっていると思っています。

先ほども言いましたが、ドローンは危険なものなので、簡単に考えてほしくないんですよね。2~3日練習したくらいで飛行申請を取り、プロとしてドローンを飛ばすことが、どれだけ危ないか。本物のプロならそんな甘い考えはしません。

――つまり、仕事の内容によっては飛行申請が必要なのですね

そうですね、仕事の内容によります。

ただプロとしてやっていくなら、その都度、飛行申請をしなくてもいいように「包括許可」を取ったほうがいいですね。包括許可があれば、1年間、たいがいの現場で飛ばせます。

現場の裏側をお話すると、包括許可を持っている人でも、けっこう機体を墜落させています……。それが原因なのかは分かりませんが、以前、ドローン操縦に関する法律が4つ足されたことがあります。足されたのでもっと厳しくなるのかなと思ったのですが、あまりにも当たり前のことばかりでズッコケました。「酒を飲んで飛ばすな」「人に迷惑のかかる飛ばし方をするな」「他の機体にぶつけるな」……みたいなものです。わざわざ足されたということは、みんなそういう行為をしているということですから。もしかしたら、包括許可を持っていても、そういう飛ばし方をしている人がいるのかもしれません。自動車免許があっても危ない運転をする人がいるように。

包括許可も覚悟して申請してほしいです。「取ればどこでも飛ばせるんだ!」。そういうことじゃありません。プロですから。どこでも飛ばせるということは、責任も重大です。覚悟を持ってほしいですね。

ドローンの仕事の将来性は? 25:00

――今後、ドローンの自動操縦が増えてくると、操縦の仕事はなくなっちゃうんじゃないかと言っている人もいます。ドローンの仕事の将来性はいかがでしょうか?

そういうふうに言っている人は、実際の現場に携わったことがない方だと思います。携わったことがあれば分かるはずです。どんなに自動操縦が増えても、それをプログラムするのは人です。微調整するのも人。プログラムが効かなくなったときにマニュアル(手動)で操縦するのも人です。

これはドローンではありませんが、普段は全自動で動いていても、ある場面では人が操縦するというものがあります。以前、東京オリンピックに向けて無人の自動運転バスが実用化されるというニュースがありました。まったく運転台のついていないバスが、銀座の町中を自動で走るわけです。しかし、もし何かあったときは、自動運転で走る区間以外も走れないといけません。そういうときは、ゲーム機用のコントローラーを差して、それを操縦桿にしてバスを動かします。こういうようなものは、バス以外にもいろいろとあります。

もちろん、将来AIがドローンと会話できるようになったら別かもしれません。「おいドローン、ちょっとあそこに物を届けてこい」「はいわかりました」「……障害物がありました。どうしたらいいですか?」「自分で考えてよけろ」。そういうことになれば、操縦者はいらなくなるかもしれません。しかし、そうなるのかどうかは分かりません。

今の段階では、操縦の仕事がなくなることはないでしょう。この間もあるメーカーの実験がありました。それは、遠いところにドローンを使って荷物を運ぶというものです。出発側と到着側にパイロットを置く。出発側のパイロットがマニュアル(手動)で機体をバーッと飛ばす。ある程度まで飛ばしたら、今度は到着側のパイロットへ操縦権を渡します。「そっちで飛ばしてー」と。それでバーっと飛ばして、機体から荷物を降ろす。こういうことは、私も昔やったことがあります。だから分かるのですが、人が手で操縦するのが一番安全なんですよ。もちろん自動航行は楽です。しかし、飛行している間に、いろいろとトラブルの起こる懸念があります。また、プログラムを入れるだけでも時間がかかったりします。

今後も、マニュアル(手動)で操縦できるということが必要になってきます。マニュアルで遠くまで荷物を運べたら、ものすごく効率が上がりますので。もちろん、そういうことができる機体は少し値段も高くはなっちゃいますが。効率や安全を考えるとなくなることはないでしょう。

ドローン・プロパイロットの活躍場面は、今後も増えていく? 28:38

――それでは、今後もプロパイロットたちの活躍する場面は増えてきますか?

増えてくるはずです。例えば、工場内の点検をするときは、高価な機械がひしめき合っているのでマニュアル(手動)でしか飛ばせません。もちろん、もっと機体がよくなってきたら、勝手に距離を測って、どこでも勝手に撮影して戻ってくることもできます。そうなってくれば、その分野ではパイロットに頼らなくてもよくなるので、活躍の機会は減ります。しかし、それ以上にどんどん別の分野の現場仕事が増えてくるはずです。シーンは変わっても、マニュアルで飛ばせることは非常に大事。これは変わらないでしょう。

マニュアル(手動)での操縦技術は、より大切になってくる? 29:28

――表面的なあり方は変わっていくけど、手動でしっかりした操縦ができるのは、ますます大切になってくるんですね

そうですね。それが分かっているので、今、うちでもさまざまな機体を開発し、生徒さんに練習してもらっています。

また、今後は生徒さんが機体を作れるようにサポートしていきます。「こういう現場だからこういう機体が必要だな」。そう思ったときに、自分で作れると強いです。現場の知識と操縦技術があれば、オリジナルの機体も開発でき、よりクライアントのお役に立てます。パイロットとしては引っ張りだこになるでしょう。他にそんなことができる人は限られているからです。

機体の知識がある人はあまりいません。この間、「ジャパン・ドローン2020」というドローンの展示会に行って、いろいろな機体を見てきました。あるブースで機体を見ていたら、「あれ?」と思うものがありました。担当者に「なんでこういうふうにしているんですか?」と聞いたら、その人もあまりよく分かっていませんでした。それで、こういう場なのであまり具体的なことは言えないですが、「こんなことをするとよくないですよ」とお伝えしたら、「そうなんですか! 知りませんでした……」と言っていました。機体の開発に携わる人も、機体の知識が乏しいときがあります。そうなると、理にかなっていない機体ができてしまいます。やはり、自分で飛ばした経験が豊富じゃないと、いいモノづくりはできません。

どんな仕事でもそうですが、それが何十年続くということは言えません。逆に言えば、近年ドローンが出てきて、自動操縦が出てきて、これからなくなると言われている職業が増えてきています。そのうちまた、世代は交代していくと思います。

ただ、今はまだそんな時期ではありません。ドローンは本当にこれからです。これからガンガン始まっていきます。実際、今の日本では、ドローンを使った仕事はガンガン行われていませんよね。これからです。日本の空のあちことで機体が飛ぶようになるでしょう。その後は、有人の一人乗り用の機体が出てきたりとか、いろいろ変わってはいくでしょう。でも、そういうところでもドローンの操縦技術は役立ちます。しばらくは必要とされる技術です。

これからドローンを仕事にしていきたい人へのメッセージ 33:35

――最後に、これから仕事にしていきたい人へ何かメッセージはありますか?

簡単じゃないですよ、と言いたいですね。プロでやるわけですから簡単ではありません。かなり頭を使います。日々の勉強や練習も必要になります。ただ飛行できればいい世界じゃありません。

よく忘れられがちですが、ラジコン(RC)の知識や技術が大切です。ドローンは、ラジオコントロールがベースにある世界です。なので、ラジコンの知識がない場合は、その勉強もしなければなりません。特に、最近は日本の政府が中国製の機体を排除しようという動きがあります。今の中国製の機体は家電みたいなもので、誰でもすっと飛ばせます。しかし、これから出てくる機体は専門性が高く誰でもというわけにはいかなくなるでしょう。

脅かすわけじゃないですが、プロになるのは簡単ではありません。安易な気持ちであれば、もう一度、ドローンを飛ばすことを考え直したほうがいいです。真剣に取り組まないと難しい世界です。この間も、「飛ばせますよ!」と言っていた人が実際に飛ばして、「ヒューン」「ガシャーン!」。墜落です。これが練習ならいいです。しかし、現場でガシャ―ンはアウトです。簡単に考えてほしくありません。例えば、うちのドローンスクールは、プロになるには1年くらいかかりますよって言っています。

――職業としてやっていくなら、習得に1年かかるのですか

そうですね。ただ、職業としてやる方だけではありません。趣味でやる方でも。飛ばしていて本当に楽しめるレベルになるには1年くらいかかります。1年くらい練習すれば飛ばすことが本当に楽しくなってきます。「GPS邪魔じゃん!」「気圧センサー邪魔じゃん!」となります。自分の思い描いたとおりに機体が飛ばせると、ものすごく気持ちいいんですね。そこまでいくには1年くらいかかったりします。趣味でも仕事でも、本当に楽しいレベルで飛ばせるには長くかかります。

――長いスパンで考えるといいんですね

いいですね。長く考えてもらったほうがね。実は、そのようにお伝えするほうが、うちで新規で受講される方は、逆に納得されます。「そうだよね。1週間くらいの練習じゃ無理だよね」って。「3~4日やったくらいじゃ、もっと無理だよね」って。だから、1年はかかるとお伝えすると「それでも短いくらいですよね」って、多くの方が言います。うちに来て、「無料ドローン操縦体験」をされた方の感想として、そういう意見が多いです。

――確かに、世の中の専門学校でも1~2年はかかりますし、それから仕事に就く流れですよね

そう。昔、私も専門学校を出て、それからプログラマーの仕事に就きました。そこは専門学校の中でもレベルの高い学校で、卒業生を、「ぜひうちに来てくれ―!」と各種企業が狙ってくるようなところでした。しかし、そういう学校を出て就職しても、会社で活躍できるのは4~5年くらい経ってからです。1~2年じゃ全然ですよね。どこの世界でも一緒です。まずは基礎を作って、そのうえで何年か経験を積まないとプロにはなれません。

うちのドローンスクールのレベルは相当高いです。現場でクライアントさんが求めることを、卒なくこなせるスキルを身につけてもらっています。例えば、クライアントさんが「これこれこういう飛ばし方をしてくれ」と言ったら、「はい分かりました。そのように撮影します。点検します」と言える、そんなレベルです。逆に、「僕は風のある中じゃ飛ばせません」「GPSが切れる場所は苦手です」なんていうのは落第です。クライアントさんが「今日こんな気象だけど大丈夫!?」と言ったら、「大丈夫です。飛ばせます」と言える。それがうちのプロパイロットです。

ぜひ皆さんには、こういうドローンスクールを見つけてほしいです。そして、本物のプロパイロットとして活躍していただきたいです。一緒に、未来の日本のドローン業界を盛り上げていきたいですね。