※「ラジコン・マスタークラス」は、
「UAV初級技能講習・検定」を合格後に受講できる
会員限定の専門コースです

今回のUAV通信、テーマは「ドローンを安全に飛ばすにはラジコン知識が必須」です。

中村:ドローンを扱う上で、ラジコンは重要なんですよね。

嶋貫:ラジコンはかなり重要です。

中村:一番重要かもしれません。

嶋貫:ラジコンの知識がないと、ドローンを仕事にすることが難しいです。

中村:今皆さんがやっているドローンは、ラジコンのシステムが土台にあります。ラジコンを知らないと、機体の話もできないし、性能の話もできない。いろいろなことが分からなくなります。例えば、うちの講習で生徒が使っている「マイクロドローン」。「マイクロドローン」をガンガン飛ばすので、生徒はよく壊します。皆さん、壊れたときに自分で直せないから、私に修理を依頼してきます。でもこれ、プロを目指すなら本当は自分で直せなくちゃいけません。しかし、直すにはラジコンの知識が必要になります。ラジコン知識は必須なんですよね。

嶋貫:必須ですね。

中村:これまでドローンというと、日本では「DJI」という中国メーカーの機体を数多く使っていました。DJI製の機体は、例えるなら家電みたいなものです。誰でも簡単に扱えます。そのかわり、制約もいっぱいあるし、できないこともあります。

今、日本では、その中国製の機体を、日本政府が排除しようと動いています。中国製の機体に頼らずに、国産の機体をどんどん作っていこうとしています。実は国産の機体は、私たちラジコン関係者が作ってきた経緯があります。そのため、ラジコンがベースになっているのです。なのでラジコンが分からないと、ドローンのプロたちが使っている専門用語が分からない。専門用語が分からないと現場で仕事が進みません。

あと、ドローンの送信機というとFUTABA(双葉電子工業株式会社)さんのものが多く使われていますね。送信機も、仕事用に作るとなった際に、0から作るわけじゃありません。もともとあるものをベースに、仕事用に使いやすいよう改良しているわけです。ラジコンが土台になっています。ラジコンですべて成り立っています。

送信機にたくさんスイッチがついていますね。画面があるものもあります。なぜそれらがあるのかというと、自分で設定するためにあります。飾りではありません。全部意味があります。それらを使いこなすには、ラジコンの知識が必要です。

私たちUAV(ドローン)プロパイロットは、そういうものまで使いこなせます。だからいろいろな仕事に対応できます。例えば、風の強い日に入れるスイッチや繊細な映像を撮るためのスイッチがあります。もともとの設定に頼るのではなく、自分の操縦スタイルに合わせて設定をしていきます。具体的には、デュアルレートを強くしようとか最初だけエクスポを入れたほうがいいな、とか。

ラジコンに詳しくないと、おそらくこういうことは分からないかと思います。例えば、送信機に説明書が同封されていますね。それは日本語で書かれています。しかしラジコン知識がないと、日本語だけど読めない。何が書いてあるか分からないわけです。そういう意味でも、ラジコンの知識をつけていただきたいのです。

また、ドローンのプロになるなら、機体も自分でいじれなくてはいけません。そうしないと、壊れたときや具合の悪いときに直せません。いざ現場で機体の調子が悪いとなれば、事故や墜落の危険があります。飛ばないとなれば、クライアントの信用を失います。そういう意味でも、ラジコンの知識や技術は必須です。

ラジコンの知識や技術を覚えるためには、最初はマルチコプター(ドローン)じゃなくても構いません。ラジコンカーでもいいのです。ラジコンカーを1回、自分で作ってみるといいです。ラジコンカーの制作キットを用意して、実際にラジコンを作ってみる。そのような授業も『ラジコン・マスタークラス』にはあります。もちろん、制作経験がない場合、図面をもとにうまく作れなかったりします。また、最終的に動かないとか、走ったけどタイヤが取れたとか、そういうことが起こります。これらを一つひとつ検証しながら経験を積めば、そのままUAV(ドローン)の機体作りにも活かせます。

最初から空を飛ぶマルチコプターだと危険ですが、ラジコンカーなら安全です。例えば、ラジコンカーなら走っててタイヤが取れても、その場でコースアウトするだけです。しかし、マルチコプターだと、ローターが取れたとなったら墜落ですからね。

嶋貫:一つ補足です。一般的にラジコンというとおもちゃのイメージがありますが、今私たちが話しているのは、「ホビーラジコン」と呼ばれるものです。なので、まずラジコンカーの組み立てキットがあり、それに合わせて送信機や充電器、バッテリーなどを自分たちで揃え、組み立て、走らせます。おもちゃ屋で売られているラジコンとは違うものなのですね。

中村:今の話しでいうと、プロポを買って、ESCを買って、サーボを買って……と言っても、この辺の言葉が通じない方も多いはずです。

そういうところなんですよね。ラジコンカーを作るとなったときに、まず作りたいラジコンカーのイメージをする。それから、スピードを出す車にしたいのか馬力のある車にしたいのか、長時間走る車にしたいのか考える。それによって用意する部品も変えなくちゃいけません。この辺りの知識も、そのままマルチコプターやラジコン飛行機、ラジコンヘリに当てはまります。

うちのドローンスクールは、「ラジコン・マスタークラス」のほかに「UAV機体製作クラス」があり、そこで生徒は、オリジナルのドローン機体を作っています。また、「ラジコンヘリ・マスタークラス」というコースでは、ラジコンヘリを組み立てます。このヘリが一番難しいのです。だからこそ、自分で一から組み立て、設定をし、飛んだときはすごいですよね。感動的ですよ。そこまでの道のりは長いです。

しかし、機体の製作の中で学べることはめちゃくちゃあります。例えば、作るときに六角のヘキサレンチを使いますが、ビスに深く入れきちんと力を入れて回さないと、なめてしまうことがあります。そうなると回らないだけじゃなく、ビスが外れなくなります。外れなくなったときに、じゃあどう取るか? それも経験です。経験がないと、「仕事現場でビスを外そうと思ったらなめてしまい、ビスが外れない!」という怖い思いをすることにもなりかねません。

機体の製作の中では、ハンダゴテを使う場面も出てきます。例えば、モーターにリード線をつけるときにハンダを使います。ハンダの仕方で、モータの回転数が変わります。下手にやるとスピードが出ない。上手にやるとスピードが出る。それくらいハンダは重要です。

しかし、ハンダも数をやらないと覚えられません。やけどしちゃったり、変なところを溶かしてしまったり。夢中でやっていると予期せぬところから煙がびょーんと出て、「ああ、溶けちゃった!」みたいな(笑)。これはあるあるです。

ところで、嶋貫さんがラジコンの知識が重要だなと思ったのは、いつ頃からですかね?

嶋貫:それは、ドローンのインストラクターをやっている中で感じました。教えているときに、基本的なラジコン知識がない生徒さんが圧倒的なのです。だから、「これを教えたいけど、その前にあれを教えなければ……」ということがよくあります。そういうときに、やっぱりラジコン知識は重要なんだなと思いました。

中村:私もそれはあります。生徒さんに申し訳ないというか。私は46年以上、ラジコンの世界で活きています。周りの人間もそういう人たちばかりです。だから、自分の説明が通じると思って話してしまうことがあります。でも、生徒さんはキョトンとした顔をしているので、「ああ、そうかそうか!」と。「伝わっていないので、どうすれば一から説明できるかなぁ」と思うときがあります。現場でプロパイロット仲間と仕事をするとき普通に通じる言葉が、生徒に教えるときにもフッと出てしまうときがあるんですよね。

だから、ラジコンで使われる専門用語を覚えていただくこともすごく大切です。このドローンという新しい分野で活きていくための言語ですから。英語を覚えるよりは簡単だと思いますが(笑)。

『ラジコン・マスタークラス』は、そういうことを体系的に学んでいくものです。今日も11人、昨日は3人、これからうちでドローンのプロパイロットを目指したいという方が来ました。しかし、14人全員が、ラジコン未経験でした。本当に0からのスタートです。そういう生徒さんでも、うちの「初級」を出た後、すぐ受講できます。受講は早ければ早いほどいいです。復習用のビデオもあります。一発で覚えるのは難しいですからね。

ぜひ、受ける機会があれば早めに『ラジコン・マスタークラス』を受講してみてください。