今回のUAV通信、テーマは「FPV(ドローン)を使った橋梁点検」です。
中村:いま見ていただいたビデオは、ある町で行ったドローンによる橋梁点検(橋の点検)の仕事です。
実はこれ、「DJI FPV」という機体でやりました。おそらくDJIの機体に詳しい方なら、「ええ!?」と思ったかもしれません。この機体、点検に使うためのものじゃないんですよね。どちらかといえば高速撮影に向いている機体です。時速140キロ出ます。しかも、ゴーグル越しで映像が見られます。機体を見ながらではなく、ゴーグルの映像を見ながら飛ばします。
今回、FPV機を点検に使ってみようということで、やってみました。これ、かなりいいんですよね。ただ、いろいろと安全対策の工夫はしています。
今見ていただいた映像では、私ではなく、フリークスガレージの生徒がFPV機を飛ばしています。生徒でありプロパイロットです。もちろん上級パイロット。その方が操縦しています。
それで、そのパイロットがFPVのゴーグルをかけているので、私がゴーグル外の情報を伝えています。わずかな情報でも伝えています。例えば、右1mに何があるとか、下がりすぎた、今離れすぎた、風が吹いている、とか。ゴーグルをかけていると入ってこない情報を、補助者が伝えます。そうすることで、パイロットは安全に機体を飛ばせます。
ビデオを見て分かるように、機体が橋の細いところに入っていっています。橋の付け根、橋梁点検車でも見られない場所です。そこは足場を組むには高すぎますし、かといってぶら下がっていくには大変。そういうところでも、ドローンを使うと点検できます。橋の溝のところに機体を入れるには、シビアな操縦技術が入ります。そのためにも、パイロットに後ろから細かい指示を出しています。
この機体も、かなりいい機体でね。ピタッと止まります。センサーは付いてますが、他の機体のように、センサー感知でそれ以上進まないといったようなもんは付いていません。だから、本当に腕一つで飛ばすことになります。
もちろん、操縦しているパイロットさんも上級を取っているくらいなので、腕がいいです。だから、補助に着く人間もそれくらいの技術を持っていないと、そのパイロットがどういう情報を必要としているかを伝えられません。
初心者の人が後ろに着いたら不安ですよね?
嶋貫:そうですね! その人の情報を、正直、信用できないです。
中村:その人の言葉を信用するしかないので、お互いの信頼関係が成り立っていないとできないですよね。
FPVが有効な現場はけっこうあります。私はよく砂防ダムなどの調査もしたりしますが、そういうところはFPVのほうがやりやすいですよね。
この日、風はそんなに吹いていなかったんですよ。風があるとちょっと不安ですが。無風ではないけど、気にするほど強くなかったのでやってみました。
思った以上に成果が出ました。センサーが働く機体だと入っていけないところまで入って、撮れました。一般的な機体でもセンサーを切ればいいじゃないかというと、そうでもありません。センサーを切っちゃうと、あそこまで安定して飛びません。「DJI FPV」は、もともと自律する力が非常に強い機体です。それで、思いがけない成果が得られました。これは、今後もこういう現場で使っていけるということです。どう思いますか?
嶋貫:やはり、FPV機を飛ばすスキルは必要なものですね。あと、私も撮影するときに補助者が着くことがありますが、補助者にどういう情報が欲しいか伝えるのも大事です。それをメインのパイロットが的確に指示をしないといけません。今回みたいに上級を取っている方ですと、補助者からの情報を正確に理解して飛ばすことができるはずです。どういう情報がお互いに必要なのか、そういうことを理解するために、補助者をつけて練習するのも非常にいいですよね。
FPVは、目視で飛ばす機体とは感覚が違います。その違いをきちんと把握して飛ばさないといけません。
中村:今、講習で使っている体育館で、よく私は休み時間に、「DJI Mini2」を使って面白い練習をしています。体育館の裏のドアから機体を外に飛行させ、建物を一周して、正面玄関から入り、自分の操縦しているロビーまで戻してくる。これを、今度は生徒さんにもやってもらいます。そのときはちゃんと、場所場所に安全保安員を置いて、安全を確保した上でやりますけれども。そういう練習もね、これからやっていきます。
これね、おそらくいろいろなハプニングが起こると思います。とはいえ、仕事でやっていくわけなのでね。通らなくちゃいけない道です。
嶋貫:機体一つ、腕一つでは現場では通用しない。それを知っていただくにはいい機会かなと。
中村:FPVの飛行練習もどんどんしていきます。
今回は、FPV機を使った橋梁点検でした。橋の形状から、普通じゃ入れない箇所に機体を入れてみようということで「FPV機」を選択し、うまく行きました。大正解。非常によいデータが取れました。
ではまた次回。