概要

●クライアント名:日本キャタピラー合同会社

●仕事時間:半日(撮影は2時間)

●使った機体:INSPIRE1

●苦労したところ:迫力ある映像を撮るために、速いスピードで前進する重機に合わせて、ドローンを後ろ向きに飛ばしたりすばやくパンさせたりしたところ。ダブルパイロット(二人一組で撮る)なら簡単な操縦を、シングルパイロット(一人で撮る)でやっている。非常に難しい技術が要求される。

●工夫した、うまくいったところ:ある場所では、GPSなしの状態でスティックを離し、機体がスーッと惰性で流れるようにして、滑らかな映像を撮った。また、走る重機に向かって1m近くまで接近し、迫力ある映像を収めた。

●撮影秘話:ほとんど打ち合わせをせず、ぶっつけ本番でやった。重機の運転手から「砂利とダンプの間を往復します」とだけ聞いて、後はその場で、自分で飛行ルートを考えた。こういうことは、現場ではよくある。

文字起こし

――今回は、ドローンで何を撮りましたか?
CATというメーカーの「ホイールローダー」という重機です。いつも私は、シングルパイロットで撮っています。ドローンの操縦もカメラ操作も、全部一人でやっています。一人でやるのはかなり難しいです。そのため、どういう飛ばし方をすればどういうカメラの角度になり、どういう映像が撮れるのか、それを頭に入れて飛行させています。(0:36)これもかなり近くまで寄らないと、こうした迫力あるシーンは撮れないです。だいたい今のは1mくらいまで近寄りました。この映像は、いろいろ編集かけているので動きがあれですけど

――「一発撮り」ですか?
一発撮りです。ほとんどリハーサルはないです。ホイルローダーの運転手から、「この砂利を向こうのダンプに運びます」と聞いただけです。あとは、それをどう撮るか自分で考えます。(1:09)これなんかも、機体をバックさせながら撮ってます。普通ダブルパイロットだと、直線で飛ばしながらカメラをパンします。そうして、重機にカメラを向けます。だから、非常に楽です。しかし、この映像ではすべて一人でやっています。常にカメラを真正面に向けておきます。横だったら真横に飛ばします。斜めだったり真横だったりと、自由自在に機体を操らないと、シングルパイロットの場合、キレイな映像が撮れないんです

――その場その場の状況判断で飛ばしているんですね
そうですね。(1:47)これなんかも、ホイルローダーに合わせて、機体を右に切っていきます。

――あらかじめ重機の動きは知っていたんですか?
ホイールローダーの運転手と、「砂利とダンプの間を往復します」っていう話しはしています。ただ、速度がどれくらいかはわかりませんでした。それで、飛ばしながら、だいたいこんな感じかなと。

――速度や細かい動きはその場で決めるんですか?
全部その場で決めます。せっかくの砂利を入れるシーンですが、ちょっとでも画像がずれちゃうと使い物になりません。(2:34)こういうのも、かなり近くまで来ています。今のもすごい近いですね。このへんは、普段から機体の動きを把握してないと、うまく動かしきれないですよね。

――重機の速度に合わせて、機体も速度を上げてますか?
ホイールローダーの速度に合わせて、ドローンも速度アップしています。車だとか動く物の動画って、機体が行き過ぎちゃってることがよくあるんですよね。止まれなくて行っちゃったっていう。もう車が曲がってるのに、機体はそのまま行ってしまう。

――難しいですよね?
難しいです。こういう映像は機体を制御しきれないと撮れないです。何も知らない方は、そういう速いシーンで、ドローンの機体だけが先に行ってしまっても、「おおすげー!」と思うかもしれません。でも、わかっている人は「ああ曲がれなかった」って思いますね。最後は、こうヒューッと引いていく。これをエンディングとして考えて、今みたいな飛ばし方をしています。

――こちらに向かってくるときの臨場感がすごいですね
そうですね。やはり、このバケットの部分が非常に大事です。バケットとは、ホイルローダーが砂利を持ち上げる部分です。(4:19)これなんかも、まっすぐ捉えています。これ、機体のカメラに自分が映り込めないので、けっこう撮るのが大変なんですよ。

――これは完全にマニュアルで操縦していますか?
完全にマニュアル(手動)で操縦しています。場合によってはGPSも切っちゃいます。GPSを切らないと、機体がカクンと止まったりします。これもほとんどGPSは入れてないですね。

――GPSが入っているとどうなるんですか?
GPSが入っていると、送信機のスティックを離したとき機体が止まっちゃうんですよね。ブレーキがかかる。GPSを切っておくと、スティックをニュートラルにしても、機体がスーッと惰性で流れてくれます。それで、滑らかに撮れます。GPSがないと一切ブレーキがかかりません。そのため、手元だけで操縦します。(5:18)これなんかもかなり近い映像ですよね。

――マニュアルだと、臨場感のある映像が撮れるんですね?
そうですね。撮れますね。(5:37)これなんかバックですからね。機体をバックでずーーっと撮っていくわけです。それからパンさせる。ダブルパイロットであれば、一人が直進で機体を走らせて、もう一人がカメラを後ろに向けながらパンする。それで済む映像です。この場合は、機体を全部、カメラに見立てて飛ばすので難しいですね。

――「一番難しい」ところは?
(6:25)これなんかも、機体をバックさせながら止めて、前に行って戻るとき、今度は横に回ります。ダブルパイロットなら直線だけで済む動きを、シングルパイロットは一つひとつ動かさないといけません。手足のように機体が動いてくれないと、的確な映像は撮れないんです。

――この映像を見て、クライアントはなんと?
クライアントは、「こんなに迫力ある映像は今まで見たことがない!」と。今までこういう映像は、クレーンやレールを使ったり、すごい大掛かりなセットを組まないと撮れませんでした。それが、今はドローンの機体一台で、ここまでのものができちゃう。「また来年もニューマシンができたらお願いしますね!」って言ってました。絶賛でした。ただ、いつも撮って編集した後に、「ここはこうすればよかった」と思うことはあります。反省点ですね。