今回のUAV通信、テーマは「ドローンの旋回上達法/八の字旋回で失敗しないコツやテクニック」です。
中村:このビデオは、うちのドローンスクールの生徒さんの練習風景です。
機体は、「DJI Phantom4 Pro」です。「えっ、これがPhantom?」と思う方もいるかもしれませんが、これは「ブラックエディション」というもので、黒いPhantomです(笑)。ガードは白です。普段、生徒さんが使っている機体は、199g以下の「DJI Mini2」です。この「DJI Phantom4 Pro」は200g以上で、少し重いです。本格的な機体です。
今、映像では、ドローンで八の字旋回をしています。機体のLEDの点滅を見ていると「ビジョンポジショニング」が入っていますね。安定して飛行しています。もちろん、体育館だからGPSは入っていません。
安定した八の字旋回をしているのですが、実はこの動き、うちでは「なんちゃって旋回」と言っています。
嶋貫:「なんちゃって旋回」がどういうことか、この世界に詳しくない方は分からないと思います。具体的にはどういうことでしょうか?
中村:簡単に言えば、ラジコンの飛行機(固定翼機)やヘリコプターのような旋回とは違うということですね。ビデオでは、機体が水平のまま旋回しています。しかし、ラジコンの飛行機(固定翼機)やヘリコプターが旋回するときは、機体が傾いて、斜めになります。かっこいいです。それが本当の旋回です。
そういう旋回のことを、「エルロン旋回」と言っています。ビデオの旋回は「ラダー旋回」ですね。「ラダー旋回」は、ゆっくりのスピードだとできてしまいます。また、ビジョンポジショニングやGPSが入っていると、なんとなくできてしまう。もしスピードが出ていて、ビジョンポジショニングもGPSもきいていない状態で「ラダー旋回」をすると、遠心力で機体が外に飛んでいってしまいます。
なので、安全に、自由自在に機体を操るには「エルロン旋回」を覚えなければなりません。映像では、若干「エルロン」が入っています。しかし、ほぼ傾きがありません。「ラダー」でぐっと回り込ませてしまっています。
嶋貫:機体がふらついていますね。ところで、体育館の広さで「DJI Phantom4 Pro」を飛ばすのは、けっこう高いスキルが要りませんか?
中村:そうですね! スキルがあればビュンビュン飛ばせます。「エルロン旋回」ができれば、スピードを出してもきれいに旋回させられます。ただ、そういう旋回ができないのであれば、体育館だと狭くて危ない場合があります。スピードが乗ってきたときに「エルロン旋回」をしないと、どんどん飛行コースが外に膨らんでしまって、ガシャーン! とぶつけてしまいます。
きちんと「エルロン」と「エレベーター」をやれば、直径1~2mくらいでサークルが描けます。小さな八の字が描けます。小さな八の字から大きな八の字までできます。「エルロン」が使いこなせないと、そういう八の字旋回は難しいです。
あと、「エレベーター」も大事です。「ダウン・アップ」を頻繁に使います。「エレベーターのダウン・アップ」と言って、ご覧の方に通じるかどうか不安ですが。他のドローンスクールでは、「前進・後進」と教えてしまっているところもあるようです。実際、「エレベーター」は「前進・後進」ではありません。「エレベーター」というくらいなので、「ダウン・アップ」が正しいです。機首をダウンさせるかアップさせるかのことだからです。「エルロン」を入れて、スピードが増したところで少しヘッドをあげます。つまり、エレベーターをアップ」します。きれいな八の字を描くには、「ダウン・アップ」を頻繁に行います。それがなめらかにできれば、旋回もスムーズにできます。「ダウン・アップ」を「前進・後進」と覚えてしまうと、そういう感覚で操縦できなくなります。
嶋貫:ドローンで八の字旋回するとなると、複数のスティック操作が必要になりますね。その他の動きですと、スティック一本だったり一つだけの組み合わせだったりで、なんとかなったりします。しかし、旋回となると操作の組み合わせが複合的になります。そこに苦戦する生徒さんは多いですよね。
中村:そうですね。どうしても動作が一つ終わってから次の動作をする、となってしまいます。安定して飛ぶ機体で練習している人だと、特にそうです。実際は、スティック2本を両方向に、つまり「エルロン」「エレベーター」「ラダー」「スロットル」の4つを、絶えず入れながら操縦します。すべての打を入れながら飛ばします。それができれば、思うように機体を飛ばせます。これは練習を積まないと難しいですけどね。
ついでに操縦の「モード」の話もします。よく「モード2」は簡単という人がいます。もちろん簡単なのですが、飛ばし慣れてくると、逆に操縦しづらくなります。細かな操作ができないからです。
嶋貫:確かに、「モード2」でやっていた生徒さんも、慣れてきたら「やりずらい」と言っていましたね。
中村:そう、生徒さんの方から「『モード2』って本当はやりづらいんですね」と言ってきました。フリークスガレージに来るまでは、ずっと「モード2」でやっていた方です。しかし、うちで練習し始めたら、「『モード1』がいい理由が分かりました!」と言っていましたね。
本当に飛ばしこなすには、「モード1」がいいんですけどね。ただ、今は「モード2」の方も増えているので、うちのドローンスクールではどちらでも大丈夫です。レクチャーできます。ただ、ずっとやるなら「モード1」がやりやすいと言えます。
今映像で飛ばしている生徒さんは、実は数ヵ月ぶりの講習です。新型コロナウイルス感染症対策で、なかなかこちらまで来られなかったんですよね。
嶋貫:お持ちの機体が200g以上の中型機。中型機と言っても、これは小さい方ですが。こういう機体ですと、外で気軽に練習できなかったりしますね。
中村:そうですね。だから、これからどんどん練習に来てもらって、ぐんぐん上達してもらいたいです。
ドローンの操縦で、旋回一つ見ても「なんちゃって旋回」と「本物の旋回」があるわけです。「本物の旋回」を覚えないと、本物の飛ばし方はできません。「なんちゃって旋回」の方が非常に多いです。もちろん、「ラダー旋回」を使う場面はあります。ありますが、「エルロン旋回」を覚えることで、より飛行のレパートリーが増やせます。また、危険回避にも非常に役立ちますからね。
今回は「ドローンの旋回上達法/八の字旋回で失敗しないコツやテクニック」というテーマでお話しました。本当はもっともっと旋回について話したいのですが、長くなったり専門的になってしまいますからね。触りの部分を2人で話しました。どうでしたか?
嶋貫:一般的なドローン旋回は、ごく低速でのことを言っている気がします。それで「ラダー旋回」になるのかなと、インストラクターとして教えている中で感じますね。
中村:そう。なかなか、何が本物で何が偽物か分からないものです。ぜひ「本物のドローン旋回」をやってみてください。