今回のUAV通信、テーマは「ドローンを安全に楽しく飛ばす/マニュアル操縦上達法」です。

中村:このビデオで飛ばしているドローンは、フリークスガレージの「UAV機体制作クラス」で作るオリジナルの機体です。サイズは450とよく言われています。一応、GPSはついています。しかし、飛ばしている場所が体育館なので、一切GPSは入っていません。しかもDJI系のドローンと違い、ビジョンポジショニングもついていないです。完全なマニュアル(手動)操縦で飛ばしています。

安全に楽しくドローンを飛ばしたいなら、この機体を自由自在に飛ばせるかどうかは重要です。自由自在に飛ばすには、テクニックを磨き、スキルアップが必要です。これが飛ばせると、自分の操縦の幅を広げられます。うちのドローンスクールでは、そういう練習もしています。

嶋貫:私がドローンを始めたときは、この機体よりもうひと回り大きくて重いものしかありませんでした(笑)。このサイズの機体になると、重さも考えて飛ばさないといけませんよね。

中村:そうなんですよ。産業用ドローンは、これよりもっともっと重たいです。重量のある機体は、軽い機体と比べて操縦感覚が全然違います。機体の重さを感じながら、自由自在に、自分の飛ばしたい方向に飛ばせるかどうか。それが非常に大切です。

重い機体だからといって、いきなりバーッと飛ばすと、遠心力でドーンと壁にぶつかっちゃいます。速度を抑えて、先を読みながら、自分の通したい飛行ルートに飛ばす。なんとなく飛んだ、行った、じゃなくて、ここを通すんだと思って飛ばさないと危ないです。

この機体を、うちでは生徒が0から作ります。そして、マニュアル(手動)操縦で飛ばす練習をします。うちで言うマニュアルは、DJI系の機体でいう「ATTIモード」、気圧センサーもさほど効かず、高さも自分で調整しなくちゃいけない、そんな本当にどマニュアルのことです。この機体は止めるための制御がないので、自分で止めないと止まりません。

嶋貫:高度維持の機能もついてはいますが、あまり当てにできませんよね。

中村:当てにできません。例えば「エレベーター・ダウン」を全開にすると、機体がバーンと下がっちゃいます。「スロットル」で出力を上げないと、高さを維持しません。今のは、まだドローンをやったことがない方には何を言ってるのか分からなかったかもしれないですけど(笑)。ドローンのプロパイロットやインストラクターなら、全部理解できたとは思いますが。

ドローンを安全に楽しく飛ばす-マニュアル操縦上達法2

嶋貫:この機体だと、DJI系の機体みたいに、ある程度高度が下がると自動的に着陸する、といったこともありませんね。そのあたりはどうでしょうか。

中村:そう、例えば地上5cmギリギリを飛ばす、なんてことができます。それを映像にすれば、スリリングなものが撮れます。マニュアルであればあるほど、実は飛ばしやすかったりします。自分の意図するままに機体が飛んでくれます。だから、飛ばしているだけでもすごい楽しいですよね!

嶋貫:ビデオでは、今のDJI系の機体だとなかなかできないような飛び方をしています。低いところをナメるように飛んでいますね。

中村:着陸のときも、DJI系の機体ではなかなかできないようなことをやっています。好きな飛行ラインから入って、ヒューッ、ストンと着陸。これ、Mavic系の機体だとできないんですよね。InspireやPhantom系ならできますけど。Inspireなら、自分が屋外で飛ばすときは、地上5cmくらいのギリギリ、下手すればカメラがこすりつくんじゃないかってところを飛ばすこともあります。

そんな高度な飛ばし方も、練習を重ねればできます。マニュアル(手動)ということは、全部自分の力で飛ばすわけです。なので、機体の機能や制御に頼って飛ばすパイロットよりも、そういうものに頼らず飛ばせるパイロットの方が安心ですよね。予期せぬできごとがあった際にも、安全に飛ばせます。

嶋貫:こういう機体じゃないと分からない飛ばし方ってありませんか? DJI系の機体では、制御が効く、性能が良すぎるゆえにできないテクニックがありますね。

中村:動かせない範囲もありますしね。この機体だと、スティック2本でいろいろな飛び方を再現できます。飛ばしていて楽しいし、練習にもなります。

嶋貫:こういう機体は、自分の思った飛行ラインに乗せられたときの楽しさがあります。

中村:そうですね。非常に気持ちがいいです。飛ばしていて。普段から、こういうちょっと重たくてパワーがある機体をマニュアル(手動)で飛ばしていると、操縦テクニックが身につきます。自信もつきます。うちでは、生徒がこの機体を自分で作って、調整して、飛ばしています。

嶋貫:もともと私も、マニュアル操縦からドローンに入ってきました。そういう機体しかなかったですから(笑)。

中村:今の機体は、安定が良すぎます。それで練習しすぎると、機体に頼らないと飛ばせなくなります。それだと成長が遅くなります。操縦力が身につかない人もいます。そういう場合は、早めに完全マニュアルに近い機体で練習したほうがいいですね。とはいえ、マニュアルで飛ばすことが目的でやっているわけではありません。マニュアルで自由に飛ばせると、非常に余裕のある飛行ができます。つまり、より安全に楽しく飛ばせるようになるわけですね。ぜひ皆さんも、マニュアル操縦に挑戦してみてください。