今回のUAV通信、テーマは「大型ドローンの2パイロットによる長距離飛行」です。

2人のドローンパイロットが、機体の操縦権を渡し合いながら飛ばすことで、遠くまで素早く、安全にモノを運搬できます。例えば、山を1つ越えて運ぶことも可能。建築なら建築資材を、高いところにバーッと運べる。工場なら、人が往復しなくても、重たい部品を遠くに運べる。林業なら、自分が行かなくても山の反対側に道具を運べる。それにより、人件費や経費削減ができます。

中村:これは大型ドローンの飛行の映像です。今、キャリブレーションをやっていますね。大型機になると、キャリブレーションも難しいです(笑)。ただ、フリークスガレージには、さらに1.5倍くらい大きい機体もあります。今回は「運搬」ということで、この機体を使った実証実験をしています。

このビデオでは、2オペレーションで機体を飛ばしています。通常、2オペレーションというと、1台の機体を2人で操作することを言います。機体を操作する人、カメラを動かす人といったように。しかし、ここでいう2オペレーションは、2人のパイロットが操縦権を渡し合い、交代で操縦することを言っています。

2オペレーションにより、機体をより遠くに飛行させられます。そして、安全に早くモノを届けることができます。

今、実際に私が機体を飛ばし始めました。グラウンドの中間くらいまで飛ばして、反対側にいるパイロットに操縦権を渡します。今ここで、操縦権を渡しました。このパイロットが機体を操作できるようになりました。

この飛ばし方のポイントは安全性です。普通、機体が自分から離れれば離れるほど危険ですよね。どこにいったのか分からなくなる。目に見える大きさが小さいと、操作も大変です。しかし、2オペレーションで飛ばすと、自分は途中まで飛行させられれば、後は反対側のパイロットが操作してくれます。例えば、1km飛ばすのに、片方のパイロットが500m飛行させれば、あとの500mはもう1人のパイロットが飛ばしてくれます。1人で1km飛ばす必要はありません。

嶋貫:離れたところへの着陸は難しいですからね。

中村:そうですね。ただ、こういう飛行に関して、自動航行がいいんじゃないかとよく言われます。もちろん便利なのですが、自動航行はプログラムで動くので、何か不測の事態があると危ないです。手動で対処できないからです。あと、スピードを出すと危ないので、ゆっくり飛ばさなければなりません。

この2オペレーションなら、バーッと機体を飛ばして、バーッと元の位置に戻してこれます。プログラミングをする必要もありません。スピーディに、安全に、正確に荷物の運搬ができます。

これができると、山を越えられます。1人で飛ばしていると、それは無理。電波は山を越えられないからです。しかし、もう1人のパイロットが山の反対側のふもとにいれば、機体が頂上に来たとき、操縦権を受け取れます。それで、そこからの電波を受信しながら、安全に操縦ができます。山を1個、越えられるんですね。

嶋貫:すべて目視で飛ばさなければならない状況のときは、とくに有効ですね。

中村:そう。逆に言えば、ドローンはすべて目視で飛ばしたほうが安全なんですよ。国土交通省が目視飛行を進めているのは、そういう理由からです。例えばFPV。これは、非常に危険を伴う飛ばし方です。2オペレーションなら、目視で、安全に長距離を飛ばせます。もちろん、向こう側にパイロットを置くことができない、人が行けない場所だと、この飛ばし方はできません。しかし、人が行けるところであれば、有効な飛ばし方です。

これからは、こういうモノの運搬方法が頻繁に行われるはずです。例えば、山の頂上にモノを運ぶとなったら、じゃんけんに負けたパイロットが1人、そこまで行くとか(笑)。この飛ばし方なら、1日に何十往復とできます。普通、歩いてモノを運ぶと2時間かかるような場面でも、10分もかからず運べます。機体がバーッと飛んで、10倍以上のスピードでモノを運べます。

この日も、実証実験は大成功です。これからドローンで運搬業務をしてみたい、仕事にしてみたいという企業があれば、フリークスガレージがお手伝いします。オーダーメイドで専用の機体も作れます。もちろん、こうした機体を飛ばすには専門的な知識と技術が必要になります。そのための教習もやっています。興味があれば、ご連絡ください。