今回のUAV通信、テーマは「ドローンの屋外練習で『初心者が注意すべきこと』とは?」です。

中村:このビデオは、大きなグラウンドで、生徒がドローン(「DJI Phantom Pro4」)の屋外練習をしている模様です。

ドローンの屋外練習は、初心者の方はいきなりやらないほうがいいです。屋外と屋内では、操縦する感覚が全然違うからです。普段、私たちは講習で体育館を使っています。なぜ体育館かというと、天候に左右されないことや風の影響を受けにくいからです。とくに風の影響は、初心者の方ですと危険なことがあります。まずは屋内で。それから屋外で本格的な操縦を身につける。この順番がお薦めです。

嶋貫:ドローンを屋外で練習するメリットは何でしょうか?

中村:GPSが入らなくても強風が吹いても、どんな状況下でも、機体を安定飛行させられることです。安定飛行ができれば、事故や墜落を防止できます。非常に大切な技術が身につきます。

この間、生徒の一人からマイクロドローンについて相談がありました。マイクロドローンはGPSもセンサーも何もないので、自分でミリ単位のスティック操作をしないと、ホバリングすらできません。その生徒は、前後左右にぶれてしまい、ピタッと空中でホバリングができず、どうすればいいか尋ねてきました。やり方を見たら、何とトリムでやっていました。本来は、サブトリムを使わなければいけません。その生徒に言いました。「トリムでもいいですが、外で飛ばす場合、意味がないですよ」と。GPSがついてない機体の場合、無風時にピタッとホバリングさせられても、風が吹けば流されてしまいます。

私たちドローンプロパイロットは、とんでもない状況下で飛行を頼まれるじゃないですか。そういう環境だと、最初から最後までGPSは入りませんね。だからこそ、「どんな状況でも安定して飛ばせる技術の習得」が重要です。プロパイロットが、GPSが入らない、風が吹いている、その中でどうやって機体を安定させているのか。それは、マニュアル(手動)操縦をやっているからです。なぜそういうマニュアル操縦ができるのか。それは、強風の中でのホバリング練習を欠かさないからです。

ドローンの屋外練習で「初心者が注意すべきこと」とは?/【UAV通信13】

嶋貫:そうですよね。となると、ドローンの屋外練習時に、初心者さんが気をつけるべきポイントはありますか?

中村:屋外練習で気をつけることは、機体をきちんとコントロールできるかどうかです。「機体がどこか飛んでっちゃった―」が怖いわけですよ。なので、最初はGPSが確実に入り、相当に広いグラウンドで、空も開けているところがいいです。ただ、毎日ドローンを飛ばしている人なら分かりますが、そういう環境でもGPSが入らなくなるときがありますね。

嶋貫:ええ、私も経験します。だから講習でも、「GPSを過信しないでください」とお話しています。

中村:ところでGPSも、これからだんだんとGNSSに変わってくるはずです。

嶋貫:専門用語になってしまいますね。

中村:GNSS(全地球測位衛星システム)とは、位置を把握するための衛星の総称です。GPSはアメリカの衛星。最近の機体は、GPSだけじゃなくGLONASS(グロナス)やGalileo(ガリレオ)、日本のみちびきがありますね。これらを総称してGNSSと言います。

そのGNSSは、絶対確実に入るわけじゃありません。どんなに広いグラウンドでも、空が開けていても、入らないときがあります。そういうことも知らないと、事故や墜落につながります。

嶋貫:GPSが入らないときの怖さはありますよね。とくに注意すべきところは何でしょうか?

中村:GPSが入らないと、機体がその場で停止しません。風が吹けば、スーッと流されてしまいます。自分でマニュアル(手動)操縦でコントロールできないと、機体がどこかへ行ってしまいます。

そういえばこの間、国土交通省の事故事例※を見ていたら、おかしな事故報告がありました。ある事業者のドローンパイロットが起こした事故ですが、「風が吹いて、機体を建物にぶつけてしまった」というものです。その事故に対して、今後どう対処していくのかも報告されていて、その内容が「風のある日は飛行させない」でした(笑)。

嶋貫:う~~ん(笑)。

中村:じゃあ無風の日だけ仕事をするのかな、と。そうじゃないですよね。風があっても安定した飛行ができる、そんな技術を身につけるのが正解です。もちろん安全を考えると、風のない日に飛行させるのが一番です。しかし、仕事ですからね。どうしても風の強い日でも飛ばさないといけないこともあります。風があったら飛ばせないなら、仕事になりません。風が吹いていても、きちんと飛ばせる練習をする。それが非常に大事です。

※参考:無人航空機による事故等の情報提供
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_ua_houkoku.html

ドローンの屋外練習で「初心者が注意すべきこと」とは?/【UAV通信13】

嶋貫:フリークスガレージでは、屋外練習に力を入れています。しかし、天候や気候の影響も大きく、寒い時期はどうしても屋内練習に偏りがちです。これはいろいろ理由がありますよね。

中村:そう。本当はドローンの仕事の技術を身につけるので、どんな寒い日でも外で練習しないといけません。ただ、寒い日に無理して屋外練習を続けると、体調を崩しますしね。ほどほどがいいです。もちろん、寒い日に外で練習するときは、生徒に防寒対策を考えてもらっています。ポケットにカイロを入れて常に手を温めるとか、手の保温は重要です。私も元旦に、山の頂上でドローン撮影の仕事をやりました。機体は、マイナス20℃まで耐えられるものを使っていたのでへっちゃらでしたが、私のほうが3分で参ってしまいました(笑)。

嶋貫:寒い日のパイロットの負担は大きいですよね。講習でも、せっかく生徒に来てもらっているのに、寒さに耐えるほうにばかり意識がいってしまうのはもったいないですね。

中村:そもそも、なぜ屋外で練習するかというと、「ドローンを落とさないパイロット」になるためです。落としちゃまずいです。趣味なら、「ああ落ちちゃった」「ははは」でもいいのかもしれませんが(いけませんが)、仕事では絶対にダメです。この間、ドローンを7台持っているという人が来て、言っていました。「7台のうち5台はどっか飛んでっちゃったんだよね。ははは(笑)」。この方は、残念ですがドローンの仕事には向いていません。

ドローンの仕事では、「機体を落とさないこと」が求められます。私は、風速が7~8m/sなら依頼を断りません。しかし、10m/sだと、ちょっと考えます。それくらいの風でホバリングすると、空中で機体が斜めになって停まっていますからね(笑)。例えGPSが入っていても、送信機のスティックから指を離すと、ヒューッと機体が流されてしきます。だからこそ、私たちのドローンスクールでは、「絶対にスティックから指を離さないように!」と、生徒には伝えています。基本じゃないですか。

ドローンパイロットは、どんな状況下でも安定した飛行ができないといけません。最近も、「GPSが入っているから大丈夫です」という人が多いです。そういう人が実際に屋外で飛ばすと、どこに飛ばすか分かりません。危ないです。

フリークスガレージでは、ドローンの屋外練習をそう考えています。くれぐれも、無理をせずに外で練習してみてください。無理はダメですよ。「機体がどっか行っちゃった」「モノにぶつけちゃった」「人にぶつけちゃった」では大変です。無理はしない。でも、なるべく機械装置に頼らず、マニュアル(手動)操縦で卒なく飛ばせるよう、心がけていきましょう。