今回のUAV通信、テーマは「200g以上のドローンできれいに撮影する操縦方法」です。
中村:このビデオは、体育館で生徒が「DJI Inspire1」を飛ばしているものです。これはかなり重い機体です。
嶋貫:撮影機としては、大型の部類に入りますね。
中村:撮影機としてはそうですね。私たちは「DJI Inspire2」や「Matriceシリーズ」をよく使います。今までもそうだったのですが、今後も、こういう重たい機体が主流になってきますね。
嶋貫:クライアントからの依頼で、仕事で撮影をするなら、大きい機体でないとできないことがあります。
中村:この映像を見ていても分かりますが、フリークスガレージでは、「旋回」にこだわっています。そのための授業もあります。なぜなら、「ラダー」だけで旋回する「なんちゃって旋回」だと、こういう重たい機体を飛ばす場合、外にふくらんでしまうからです。思うように動かせないのですね。重たい機体を自由自在に操縦するには、スティックのすべての打を駆使しないといけません。
重たい機体を飛ばしこなすのは、「なんちゃって旋回」では絶対に無理です。「エレベーター」をアップさせて機体のヘッドを上げないと、きれいに戻ってきません。そうした操縦を覚えるには、重たい機体で練習するのが非常に大事です。
嶋貫:重たい機体を飛ばす際の注意点はありますか?
中村:とにかく重さがあるので、車のブレーキテストみたいに、どれくらいの距離でどう制動するのかを調べないといけません。感度は変えられますが、撮影時に感度を変えてしまうと、大きい機体は極端に揺れてしまいます。静かに制動させるには、それなりの操縦テクニックが必要になります。ジンバルがついているから、ある程度はきれいに映像が撮れます。しかし、機体が揺れ過ぎると、映像に違和感が出てしまいます。違和感なくきれいに撮るには、制動の距離も分かっていないといけません。重いので、機体が流れてしまいますから。
嶋貫:大きい機体だと、制御する上で「エルロン」と「エレベーター」がすごく重要ですね。撮影となると、「ラダー」の動きもシビアになってきます。
中村:そうですね、スッと機体が動くと、映像にはものすごく違和感が出ます。止まるときも、ピタッと止まると違和感が生じます。もちろん、ジンバルが動きをなめらかにしてくれるのですが、それに任せるといい映像は撮れません。機体をデリケートに操縦しないと、使える映像は撮れないのです。
嶋貫:フリークスガレージが「エルロン旋回」を重視しているのは、そこにありますね。
中村:重たい機体をきれいな飛行ラインに乗せるには、エルロンを入れた旋回じゃないといけません。エルロン旋回なら、カメラの動き出しも柔らかくなります。それがすごく重要。エルロン旋回のメリットはいろいろあります。1個や2個じゃない。危険を回避するときの急旋回も、エルロン、エレベーターを打ちます。
嶋貫:この映像を見ていても、エルロンで旋回できているときとラダーでギュンと回るときがあります。大きい機体だと、それらが顕著に出ますね。ラダーが多いときは、機体の飛行ラインが曲がっている。
中村:思い通りのラインからスッと外れてしまいます。
嶋貫:大きい機体は、跳ね返りというか反動も大きくなる気がします。
中村:この映像は、いい旋回と悪い旋回があります(笑)。エルロンでいい感じで回っているところとラダーに頼ってグッと回っているところと。これで映像を撮っていたらアウトだなと感じる動きがあります。ちなみに、これは練習なのでカメラは外しています。
とにかく、重たい機体の操縦を経験できるのであれば、一回やってみてほしいですね。これからの産業機は、重たい機体ばかりですから。
嶋貫:産業機からしたら、この映像の機体も小さいほうですよね。
中村:そう。フリークスガレージで扱う一番大きな機体の5分の1くらいですね。
ドローンを安全に飛ばすという意味でも、大きい機体は自由自在に飛ばせなければなりません。小さい、軽い機体ばかり練習していても、仕事にはなりませんから。重たい機体で練習する意味は、非常にあります。生徒さんが言っていました。「重たい機体を飛ばしたときに、はじめて『ラジコンヘリコプター』を練習する意味がわかった!」と。それまでは、「なんでこんな練習をするんだろう?」と思っていたみたいです。
嶋貫:けっこう言われます(笑)。「この練習メニュー、何か意味があるんですか?」って。
中村:大きい機体を飛ばした瞬間、その答えが出ます。
嶋貫:機体を大きく動かすときは、「エルロン」と「エレベーター」じゃないですか。それらの使い方も重要ですね。
中村:それでよく、「モード」の話になります。「エルロン」と「エレベーター」は別々のほうが正確に飛ばせるということを言います。だから、フリークスガレージでは「モード1」を推奨しています。もちろん「モード2」が悪いわけじゃないですが。ただ、「モード2」は、機体を正確に飛ばすためにできたわけではありません。この間も、もともと「モード2」で操縦していた生徒がうちに来ました。うちで練習を始めると、「最初からモード1にすればよかった…」と言っていました。「モード2」は直感的に飛ばしやすいのですが、細かく操縦するときはちょっと大変なんですよね。できないわけじゃないですが。
嶋貫:その生徒さんは、重い機体を飛ばしたことがあったので、「モード」についても理解ができましたね。
中村:機体が大きくなればなるほど、正確な打の打ち方が求められます。フリークスガレージでも、大きい機体を飛ばせる練習の機会をどんどん作っていきます。200g以上の機体についても、分からないことがあればいつでも聞いてください。
今回は、200g以上の機体できれいに撮影する操縦方法をお話しました。重い機体を体験する機会があれば、ぜひ操縦してみてほしいです。操縦テクニックの難しさが分かるはずです。無理のない範囲で、経験してみてくださいね。ではまた次回。