※音声解説は6:16から

ドローン物資輸送の概要

3月17日、某所で「皆野町」と「早稲田大学」「フリークスガレージ」共同によるドローン物資輸送が行われました。この日は災害時を想定し 山のふもとから約1km離れた頂上の集落に、5kgの救援物資を運びました。ふもとと頂上にパイロットを置き、約5分で1往復の輸送に成功しました。

2オペレーション操縦とは?

ドローン物資輸送で機体を離陸させるところ

今回のドローン物資輸送は、2オペレーター式でやっています。2オペレーション操縦とは、ドローンパイロットを離陸地点に一人、着陸地点にもう一人置き、電波が途切れないようにして長距離を飛行させる方法です。着陸地点のパイロットは、着陸地点ではないところに置くこともあります。

2オペレーション操縦のメリット

ドローン物資輸送で荷物を運ぶ機体

2オペレーション操縦のメリットは、事前に機体に飛行ルートをプログラムする必要がなく、すぐ実行できるところです。機体も安く、低コストで実施できます。これが自動航行で物資輸送をするとなると、大掛かりな準備や数千万円の費用がかかります。この映像のようなフリークスガレージ式であれば、パパパッとできます。「ちょっと1km先まで物資を運ぼうか」というノリですぐ運べます。

1kmを5分で往復できます。5kgの物資を積んでいます。今回は軽めに積んでいます。この映像の機体なら、10kgまで積めます。もし10kg積めば、1日10往復すれば10×10で100kg分を運べます。1時間もかからずに。50往復すれば、500kg分の荷物を楽に運べます。2オペレーション操縦ができる現場であれば、非常に効率よくスピーディー、かつ低コストでドローンの物資輸送を運用できます。

もしドローン物流を1オペレーションでやろうとすると、非常に費用がかかり、準備も大変です。インフラ設備が必要なので、導入費用だけで数千万円くらいかかります。2オペレーションなら200~300万円くらいで一式導入できます。これなら中小企業でもすぐに取り入れられます。

2オペでの物資輸送ができる現場とは?

ドローン物資輸送をもう1台のドローンで空撮中

今回のドローン物資輸送の仕事は、あらかじめ災害現場を想定しています。そう言うと、「災害で向こうまで人が行けないからドローンを飛ばすんじゃないか」と考えるかもしれません。しかし、何らかの方法で着陸側までパイロットが行ければ、実行可能です。パイロットを含め、3人くらいが着陸側まで行ければ、こういうかたちで物資輸送ができます。

このドローン物資輸送のやり方は、災害現場でなくても活用できます。例えば林業ですと、苗木や苗木を守る杭、木を切るチェーンソーなどの道具を、山のふもとから頂上にすぐ運べます。フリークスガレージにもよく問い合わせがありますが、すでに取り入れている企業もあります。

2オペでの物資輸送を取り入れるべき業種は?

ドローン物資輸送で着陸側のパイロットが操縦
ドローンが着陸し、物資を受け取っている

このドローン物流のやり方は、いろいろな企業が導入できます。例えば測量業界なら、レーザー測量時に使えます。非常にスピーディーに測量ができます。普段、私たちはこの機体に何千万円もする「レーザースキャナー」を積んでいます。まだまだ「DJI Phantom」で測量をされる企業さんも多いですが、効率を考えるとあまりよくありません。建築や土木でも、重たい材料や道具を1kmまですぐに運べます。時間短縮になるし、人件費も削減できます。あらゆる業種・業態で応用できるのが、この物資輸送の操縦方法です。

マニュアル(手動)操縦の大切さ

物資を下ろしたドローンが山のふもとに戻っている

現場では、想定どおりにはドローンを飛ばせません。例えば、この日は非常に風の強い日でした。そういうときこそ、「風が強いから、1本目の飛行ルートはこっちにして、もう1本目の飛行ルートはこっちにしよう」など、その場で決めなければなりません。実際、私たちはこの日初めて、この場所で飛ばしています。練習しているわけではなく、ぶっつけ本番です。的確な飛行ルートを決め、飛行中に何があっても対処できるには、すべてマニュアル操縦で運航するしかありません。自動航行では、不測の事態に対処できず、墜落してしまいます。

機体の離着陸時もそうです。状況を見て、現場で「ここから飛ばそう」「あそこに下ろそう」と判断します。あらかじめプログラムされた飛行しかできない自動航行では、その場の状況に対処ができません。この日の着陸側のパイロットは私です。朝、現場に来て、その場で着陸によい場所を判断しました。ちなみに、この日の離陸側のパイロットは、フリークスガレージの上級パイロットです。20代で若いにもかかわらず、相当の腕があります。すべてマニュアル操縦で安全に飛ばしています。

「安全のための知識」「マニュアル操縦の技術」「高すぎず性能のよい機体」、この3つがあれば、すぐにでもドローンで物資輸送ができます。世の中では、大手企業が実証実験の段階で止まっており、実用化までいっていません。そのため、「本当にうちの会社でもできるのかな……」「導入したいけど機体がものすごく高くて……」「特別な知識や技術が必要なのでは……」といった相談をよく受けます。しかし、きちんと私たちみたいに、無駄なくスマートに運用しているところもあります。

安全のための操縦テクニック

ドローンが空中で向きを変えている

この上空の場面で、機体がくるっと回っていますよね。これもプロのテクニックの一つです。より安全に飛行するには、機体のお尻を自分に向けて操縦します。すると、機体が向くとおりのスティック操作で動かせます。現場での仕事は、ドローン操縦の競技でやクニックを自慢する場ではありません。格好つける必要はない。すべて安全のために飛ばします。私たちは、こうした細かいところにも気を配って、安全に飛行させています。

また、私たちのパイロットは常に機体を目視しながら飛ばします。山の頂上から離陸した機体は、山のふもとのパイロットに見えるよう、高く上げていきます。山のふもとのパイロットが機体を確認できたら、そちらに操縦権を渡します。今無線で「You Have」と言ったのが「操縦権をそちらに渡しました」という合図です。そうすることで、ふもと側のパイロットが機体を操縦できるようになります。あとは、機体を目で見ながら下まで下ろしていきます。自分で確認しながら飛ばしているので安全です。

ドローン物資輸送の実用化に成功

ドローン物資輸送の機体が無事にもとの場所に帰還

今回も、離陸から飛行、着陸時まですべてマニュアル操縦でした。着陸側の環境を見ても分かるように、電線だらけです。こんなところで自動航行はできません。無事に着陸しました。山のふもとから頂上の集落に、5kgの救援物資を届けました。フリークスガレージでは、1kmを5分で往復することに成功しています。そうした2オペレーション操縦で、ドローン物資輸送をやっています。

今回ご覧になった操縦方法は、物資輸送以外にも使えます。「うちの会社のこんな業務でもドローンは使えるの?」。そんな質問をたくさん頂きます。できることもありますし、できないこともあります。詳しく話を聞かないとわかりません。本気でドローンの導入によるコスト削減を考えているなら、一度ご相談ください。