「Japan Drone 2020」に来ています。これは、ドローンをテーマにした展示会です。ドローンに特化した大きな展示会は、日本に2つあります。そのうちの1つが、この「Japan Drone 2020」です。毎年開催していて、今回が5回めです。幕張メッセでやっています。
フロアマップを見ています。今回の「Japan Drone 2020」には、打ち合わせをしたい企業さんが何社かあります。ここでは、その場所をチェックしています。
ここは、制御装置などを作っているメーカーさんで、真っ先に行きたかったところです。展示場に到着してみたら、自律航行する面白いヘリコプターが置いてありました。プロペラは、シングルローター(1枚羽)。普通のヘリコプタータイプです。普通と違うのは、この中にいろいろなセンサーがついているところです。それによって、マルチコプター(一般的にドローンと呼ばれている機体)のように、何もしなければその場でホバリングし、高さを維持します。そういう機能がついています。形はヘリコプターですが、動きはマルチコプターです。かなり性能のいいヘリです。ここまで性能がいいのは、今までなかったですね。
この会社が、ある子会社を作ったんですけど、そこにはもともとヘリメーカーで働いていた人がかなり所属しています。すごいことになっていますよね。制御装置を作る会社さんに、ヘリを作れるスタッフが集結しています。今後もすごいことになりそうですね。すごいというのは、この機体を使って、あらゆる仕事ができるということです。
ただ、このヘリコプターは、マルチコプターに似ているとはいえ、あくまでもヘリです。ヘリを飛ばす技術がないと操縦は難しいでしょう。ただ、安定していてスピードも出ますし、長時間飛びます。すごいと思います。プロになりたい人は、今のうちにヘリコプターの操縦も練習するといいですね。私は昔から言ってますが、ヘリもドローンですので。
※ドローン=無人航空機=マルチコプター、ラジコンのヘリ・飛行機
最近、中国製のドローンを政府機関が使わないということがニュースで発表されました。では、中国製のドローンに取って代わるものがあるのか。実は、あります。それを、このメーカーさんに見せていただいています。
今写っている部分は、機体がどういう状況で飛んでいるかという情報をリアルタイムでモニターしているところです。この画面では、自動航行をしながら、地図が出てきて、ここからこう飛んで、こっちに飛んで、ということが見えます。この装置であらゆる制御ができます。すばらしいです。写真では見えないですが、手前にコントロールするスティックがあります。それを動かすとモニターに反映されます。マニュアル(手動操縦)で飛ばしたりするのにも使えます。また、プログラムを打つこともできます。
これは、東京航空計器の子会社として設立されたTKKWorksさんです。そこになんと、ヘリメーカーのスタッフさんたちが集結しています。そのスタッフさんから、送信機の説明を受けています。ここは、かなり面白い送信機を作っています。私が理想としていたものを、本当に現実化してくれているなと。理想というのは、部品の多くが日本製で、システムの中身が見えやすいというものです。プログラムの中身が見えやすければ、「ここはこういうプログラムに変えればこう変わる」という改造がしやすいのです。これは、中国製だと中身が不透明なので、なかなかそうもいきません。
これは、そこで作っている「可変ピッチ」のマルチコプターです。「可変ピッチ」というのは、ピッチ(羽の角度)を変えられることです。それによって、例えば機体の上昇や下降が滑らかになります。これまでの機体は、上昇や下降、前進や後進、左右の移動をするときは、モーターの回転数を変えていました。より高く飛ばすには、よりモーターを回転させて揚力を増やします。逆に、降下するには回転数を落として、揚力を減らします。前進するときは、後ろ側のローター(羽)の回転数を上げ、おしりを持ち上げ、前に進む力を得ます。これだと、モーターの回転数が上がってから動くので、機体がカクッとした動きをすることがありました。一方、「可変ピッチ」だと、上昇するときは、回転数を上げるのではなくピッチを深くして、揚力を増やすんですね。それによって、ピッチが入った瞬間、機体がポンッと滑らかに上昇します。ヒューンヒューンと動きます。
この機体は、重いものを運んだり、過酷な条件下で使いやすいはずです。例えば、風速20mくらいのところでも飛ぶでしょう。強風の中でも、姿勢が変わった瞬間にババババとピッチを変えられるので、静止していられます。それは、可変ピッチだからできるんですよ。今までよりも環境が悪いところで飛ばせる機体です。
画期的な技術です。これはヘリメーカーと組まないとできないことです。可変ピッチの機体は、昔から私も考えていて、作ろうと思っていました。また、3~4年くらい前から作っていたメーカーさんもありました。今までも実機はありました。これは、かなり完成度が高い状態で出てきていますよね。
日本では、電波に関して、よく分からない決まりがあります。例えば、いい電波なのに、仕事に使っちゃいけないとか空中では使っちゃいけない、免許を取らなくちゃいけない、などなど。よく分からない法律がいっぱいあります。
その中で、免許もいらず使える画期的な電波があります。その電波で飛ぶ機体を、私も仕事で使っています。そこで、3~4年くらい前からFutabaさんに、「早くその(電波帯の)送受信機を作ってよ」と頼んでいました。一昨年くらいに、「まだ公表できないけど一徳さんには特別に教えます。実は、今それを作ってるんですよ」と聞きました。それで、今年の5月には確かなことが分かるかなと思っていたんですよ。5月にホビーショーというラジコンの展示会があって、そこでいつもFutabaさんから情報をもらっていたので。しかし、今回はコロナで中止になってしまいました。そういうこともあって、この「Japan Drone 2020」は楽しみにしていました。実際、話を聞いてみたら、ついに自分が欲しいと思っていた送受信機が製品化されました。いよいよ販売が始まります。待望の瞬間でした!
今後、Futabaさんの送信機は主流になってくるはずです。もちろん、すでに世界でもトップクラスのラジコン送受信機メーカーです。ここの送受信機が、あちこちで見られるようになるでしょう。うちでも販売しています。当ドローンスクールの中級レベル以上は、マルチコプターやヘリコプター、飛行機を飛ばす際は、すべてFutabaの送受信機でやっています。
徳島の那賀町がドローン特区になっていますね。どうも、福島県の南相馬市でも、似たようなことを始めたみたいです。広大な土地に実験施設を作って、ロボットの実験をするような。その中に、UAV(無人航空機)の飛行施設もあるみたいです。面白そうですね。自由に見学できるみたいなので、今度行こうかなと思っています。どういうことに取り組んでいるか聞いてみたいです。ついにこういうところができたんだなと感じました。ちょっと変わりそうですよね、日本が。私も南相馬市に引っ越そうかなと思うくらい魅力のある施設です。
これは、もうね機体が気に入りました! すごいですよね。ラジコンの飛行機のエンジンを使っているんです。3気筒のエンジン。ラジコン飛行機用のエンジンを使った、ハイブリッドマシーンなんですよ。
これ、面白いのが、エンジンでローターを回しているかといえば、違うんですね。いや、エンジンでモーターを回す機体もあるんですよ。ただ、エンジンでローターを回すと、100%可変ピッチじゃないと飛ばせないんです。分かります? 実際、あるんですよ。数年前から、エンジンでローターを回して、可変ピッチで飛ばしている機体が。それを飛ばしている方や作っている方がいます。
それで、なぜ普通はエンジンだと飛ばないか分かりますか? 固定ピッチだと、モーターで回転数を制御しているんですよ。ということは、4枚羽のクワッドコプターだと、4ヶ所のモーターの回転数をそれぞれバラバラに制御して飛ばしているわけです。でも、エンジンは1個じゃないですか。1個のエンジンでばらばらに4ヶ所を動かす、というものは作れないんです。1個のエンジンで、4ついっぺんに回すことはできます。しかし、それだと100回転したら、4ヶ所も100回転します。これでは、前進したいときはどうするのか? できないんですよね。あと、機体を水平に保つには、右に傾いたら左に、左に傾いたら右にとバランスを取ります。これが1個のモーターだと難しい。ところが、可変ピッチだとできるんです。ピッチを変えれば揚力も変わります。だから、100%エンジン機でも大丈夫なんですよ。
この機体になんでエンジンが付いているのかといえば、あくまでもモーターを回す電力を発電するためです。自家発電した電力でモーターを回しています。飛ぶ原理は、電動の固定ピッチのマルチコプターと同じです。この機体は、可変ピッチじゃないですよ。これはエンジンで電気を発電して、発電した電気で固定ピッチの4つのモーターをコントロールしています。単に発電機だと思ってください。このエンジンは。
実は3年前に、このタイプのアメリカの機体の飛行実験を、うちがサポートしたことがあります。そのときは、3時間飛びました。しかし、どうもこの機体は1時間しか飛ばないみたいですね。3時間飛ばしたことをスタッフに話したらびっくりしていました。「なんで3時間も!?」って。
これね、すごい無理のある機体なんですよ。この写真だと分かりづらいですが、アームの上下にモーターがあって、ローター(羽)が重なって付いているんですよ。それは、ものすごく効率が悪いんです。本当は、ローターは一つひとつバラバラに付けたほうがいいんですね。そのほうが燃費がよくなり、少ない回転数でより長く飛ばせます。ローターを重ねてしまうと、ものすごく効率が下がります。あまりよくないですね。
でも、こういう内燃機関が大好きなので、エンジンに惚れました。すごくカッコいい。高いエンジンなんですよ、それ。クラシックの飛行機とかにね、3気筒のエンジンをつけて飛ばしたりするんですけど。5気筒とかもあるんですよ。星型エンジン。これも星型エンジンの一つなんですけど、これたぶん、いい音しますよ。エンジンについては、一晩中でも話せます(笑)
このメーカーさんが、私が3時間飛ばしたことにすごく興味を持っていました。さっき言ったように、「こういう形はすごく効率が悪い」ということを伝えたら、それは分かっていなかったみたいです。説明したら納得してくれました。「次に作るときはこうしないほうがいいですね」と言っていたので、「次に作るときは私に聞いてください」って言っておきました(笑)。これ、絶対に効率が悪いですから。やっぱり、ラジコンをやっていない方が作ると、こういう形になっていっちゃうんですよね。現場の技術者もラジコンをやっていた方がいいです。
これは、マグネシウムっていう金属でつくられたフレームですね。マグネシウム合金。今までは、フレームだとかマルチコプターのギア(飛行機の足のこと)は、軽くするためにカーボンとかで作られていました。しかし、カーボンって加工がすごく面倒くさいんですよ。加工したものを作ろうとすると、一発で型をつくらなくちゃいけない。けっこうお金がかかります。大変なんですよね、カーボンでやろうとすると。そうしたら、今はマグネシウムでできるという。これは金属なので、加工しやすいんですよ。軽いし。
このメーカーさんに話を聞いたら、試作も作りますよと言ってくれました。うまくいけば、軽くて頑丈な機体が作れるかなと。これは興味津々でしたね。昔から、マグネシウムが軽くて丈夫だということは分かってました。それが、今までは大手金属メーカーに頼まないと加工できなかったんですよ。それを町工場でやっていて、いろいろとこちらの要求に応えてくれるみたいなんです。『下町ロケット』じゃないですけど、大手ではできないようなことが、町工場ならではのアイデアでできるのかなって。メーカーさんも、ぜひ使ってくださいとのこと。工場が静岡県の富士宮市にあるみたいなので、今度、見学に行ってきます。
このときに貰ったパンフレットに、クラウドファンディングの募集がありました。なんでも、「マグネシウムのいいところを知ってもらうために商品を作ったので応援をどうぞ」ということです。応援したかったので、さっきさっそくクラウドファンディングに振り込みました。企業名は株式会社マクルウさんですね。
この技術は実用化されています。この技術でオリジナルの機体を開発できれば、より思い通りのものが形にできます。しかも、より軽く、低コストで。最高です。すぐ見学に行きます。
これもドローンです。たぶん皆さんは、ドローンと聞くとマルチコプターのことだと思うはずです。今後は、こういうものも飛び始めると思います。この機体の使い道はいろいろあります。例えば、無人で長距離の荷物を運んだりできます。そうすれば、パイロットがいりません。太陽光か何かで飛べば、燃料費もかかりません。こういう大型のドローンを人が送信機で操縦するかと言えば、どうでしょうか。ここまでくると、全部自動かもしれません。ただ、緊急時には人が操縦できる、そんな装置もつけてあるはずです。私も飛ばしてみたいですね。
今、DJIがダメだって風潮です。こういうことになるんじゃないかと、どうも中国のメーカーにいたスタッフが懸念して、同じような機体を作りました。それがこれです。ちゃんとアメリカに登録がある会社が作っています。11月くらいに発売される機体の写真ですかね。日本でも使えます。アメリカのものですから。200g以上ありますね。今の小さい機体に取って代わってくるものなので、うちでも一台入れてみようかなと思っています。
これは、谷+1。さんですよね。ドローンを使った芸人さんです。会場で偶然会いました。横瀬町(うちのお店がある町)でやっているちょっとしたプロジェクトがあって、そのZoom会議などで顔を合わせていたんですけど。あと、ホビーショーで京商のブースによく遊びに来ていたので、そのときによく顔を合わせていました。この日は偶然、会場で会ってね。Tシャツには、「あなたはドローンを好きですか?」って書いてあるんじゃないかな。
まとめですが、今回、「Japan Drone 2020」に行って本当によかったなと感じています。コロナのことがあって、いろいろな情報が、一時は耳に入ってこなかったんですよね。なので、一気にここで情報が入ってきました。感想としては、全然変わらないメーカーもあれば、将来を見据えていいものを作っているメーカーもあったなと。うちもね、遅れをとらないように、最新の情報を入手しながら、これからのUAV業界の中心的存在になっていければなと思います。ありがとうございました。