2020/11/30 読売新聞「省庁のドローン1000機、中国製を排除へ…安保懸念『国産』導入を視野」
日本政府の「中国製のドローン排除」への見解 00:00
中村 一徳(以下略):2020年11月30日の読売新聞のニュースで、「省庁のドローン1000機、中国製を排除へ…保安懸念『国産』導入を視野へ」という発表がありました。私自身、プロとしてドローンを飛ばす仕事をしており、また、プロパイロットを育ててもいます。そういう立場から、今回のニュースへの見解をお話していきます。
まずは、省庁はドローンを1000機も持っていたんですね(笑)。しかも、1000機全部が中国製みたいです。いかにこれまで日本製のドローンがなかったのかが分かります。それで、省庁の持つドローンを全部日本製にしようということなんでしょう。
ニュースには、「中国製だから情報が盗まれる」みたいなことが書かれています。「サイバー攻撃、情報窃盗や機体の乗っ取りなどのリスクも指摘されている」とありますね。中国製……ニュースではDJIとメーカー名が名指しされています。DJIは、ドローンのシェアが世界の9割近くという中国の企業です。ニュースには、「DJI製は安価でいいけど、その反面、サプライチェーンリスクにさらされやすい」とも書いてあります。実際、DJI製の性能はすごくいいんですよ。それで乗っ取りを懸念しているのでしょう。
しかし、機体が乗っ取られると言っても、それは中国製だけではなく日本製だろうがアメリカ製だろうが、どんなものにも可能性はあります。詳しい人間がその気になれば、いつでも乗っ取りはできますからね。それはドローンだけの話ではなくて、例えば中国製の掃除機や冷蔵庫にも、何が入っているか分からないわけです。もしかしたら冷蔵庫やテレビの中に盗聴器が入っていて、情報を盗まれているかもしれない。「中国製のドローンだから乗っ取られる」ということではありません。どうもアメリカが中国の製品を嫌っているからそれに日本も習っているのかなと。
このニュースは何を伝えているのか? 03:11
――まったく素人で分からないのですが、結局、このニュースは何を伝えているのですか?
う~ん(笑)。中国製の機体を使うと、何か分からないけれど何かが盗まれる、かもしれないと。何かすら分からないんですよね。ただ漠然と、中国メーカーが作ったドローンだと何かが中に仕込まれていて、データが盗まれるかもしれないということです。
――それで日本政府は、もう中国製の機体を使わないと?
使うのを止めると言ってます。だけど、そんなことをしたら、また日本のUAV(無人航空機のこと。ドローンの正式な呼び方)の技術や産業の発展が止まっちゃいますよね。
――日本のドローンの発展が止まってしまうのですか
はい。今、日本製の機体で、中国製の機体と同じようなものがあるかと言えば、ないんですよ。同じレベルのものがない。日本やアメリカのメーカーも一生懸命に作っています。でも同じくらいのものはまだないんです。最近、私はDJIのコントローラーを積んだ機体を作りました。また、アメリカ製のコントローラーを積んだ機体も作りました。DJI製のコントローラーを積んだほうは、非常に簡単にセッティングができ、飛ばした感じもいい。ものすごくフィーリングがよかったです。一方、アメリカ製のコントローラーを積んだほうは、設定だけで2~3日もかかりました。設定項目が多すぎるんですよね。最初は全然飛びませんでした。なんで飛ばないのかなと思ったら、1つチェックが外れていたからです。複雑です。おそらく日本製の機体は、もっと複雑かもしれません。
ニュースで言っていることは分かるんですが、果たして何を盗まれるのかが分からない。飛んでいる機体の飛行ルートや撮っている写真・映像が盗まれても、それを何に使うのか。テロにでも使うんですかね。
中国製の機体を排除してもデメリットはないのか? 06:06
――中国製のドローンを使っていても、政府にとってデメリットはないということですか?
デメリットが分かりづらいですね。例えば、中国製のドローンで皇居の上を空撮したとします。すると、その画像が盗まれるというのはあるかもしれない。しかし、それならヘリコプターを飛ばせばいいだけの話です。実際、昔の空撮はヘリでやっていました。ヘリにカメラマンを乗せて撮らせれば、空撮できますよね。なので、本当に盗まれたらまずい場所だけ注意すればいいと思います。
DJIの機体が飛ばせないと困る人は、非常にたくさんいます。例えば、ニュース記事にもありますが、災害現場も規制の対象になるということです。そうなると災害現場のスタッフは、性能のよいDJIの機体を飛ばせません。まだそこまで性能のよくない日本製の機体を飛ばさなければなりません。それは人の命を救うのに、何の意味があるのでしょうか。他にも、遭難者を発見するのだってもっと大変になるはずです。「一体、どの機体で探しにいくんだ」ってことです。
別に私はDJIを押しているわけじゃありませんが、プロとしてドローンを飛ばしている立場から言うと、最大限によい仕事をしようと思ったら、それに応えてくれる機体はDJIになってしまうんですよ。好き嫌いやひいきではなくて、本当に使いやすいのです。もちろん、シークレットな部分が多いのも確かです。ただそれは、中国だから隠しているわけではないでしょう。企業秘密はどこの企業でもあります。秘密はきっちり守っています。これは日本の機体だってそうなるはずです。「日本製だから全部オープンにしろ。コントローラーの中のシステムから何から、全部公開しろ」、と言っても公開しないと思います。それと同じです。企業秘密は日本でもアメリカでも、どこにでもあります。
中国製の機体を排除するのはコストパフォーマンスが悪い? 09:02
もし日本製のドローンを導入しようとすれば、コストが非常に高くなります。例えば、「中国製なら30分飛ぶよ」「いや日本製なら60分飛ぶぜ」「じゃあそれ、いくらなんですか?」「500万円です」「DJIのは10万円なんですけど……」、という話なんですよ。
日本製のドローンは、500万円で1機しか買えません。1機しかないので、堕ちたら終わりです。次の機体がもうない。また、1時間飛ぶとしても効率が悪いです。ところが、中国製のドローンは、100万円で10機買えます。10機で広域捜査ができます。どちらのコストパフォーマンスがよいかは、言うまでもありません。
そんなに秘密厳守の場所で日本はドローンを飛ばしている? 10:16
――そもそも日本は、そんなにも秘密にしなければならない場所でドローンを飛ばしているのですか?
飛ばしていないと思いますよ。飛ばせてないですもん。多分これは、アメリカが中国製を排除しようと言っているので、日本もそうするということでしょう。
――アメリカに追随している……
はい。もし民間の人たちがこれに習ってしまったら、仕事にならないですよね。やばいな、こんなこと言っていたら政府に目をつけられちゃうかな(笑)。
そもそも日本は、ドローンについてよく分かっていない? 10:49
――国があまりドローンについて分かっていないんですか?
分かってないです。本当に分かっていない。つい最近も、国の関係者と話しましたが全然でした。
今、日本でドローンを使って問題解決をするなら、DJIの機体なしではできません。それなのに、排除してどうするのかな。仮に、日本製の機体を買うとします。この日本製の機体は、DJIの10万円の機体に匹敵する性能だとします。値段は300万円するとします。そうなったとき、残りの290万円を国が補填してくれるのかということですよね。
――その可能性は?
ゼロでしょうそれは(笑)。「300万円出して買いなさいよ!」と言われるだけです。
うちにも、「ドローンを使った問題解決がしたい」という、さまざまな相談が来ます。しかし、何をするにしてもDJIの機体がないと難しいです。もちろん日本製の機体でもできますよ。ただ、予算が10倍以上かかります。それだけ出せるなら、いくらでもご協力できるんですけどね。
一般のドローンパイロットにはどんな影響があるか? 12:10
――今回のニュース内容は、簡単な空撮を楽しむくらいの一般のドローンパイロットには、どんな影響があるのですか?
趣味で飛ばしている人には、あまり関係ないと思います。これからビジネスにドローンを導入しようかなと思っている人とかも。国と関わるような仕事をしていなければ気にすることはないでしょう。そういう仕事はバンバン来るわけじゃないですから。
国からの依頼でもドローンを飛ばしている中村氏の意見は? 12:45
――最近も、中村さんのところにある省庁から仕事の依頼が来ているようですが、今回のニュースを受けて、どんな考えがありますか?
うちは問題ありません。中国製の機体がダメなら、日本製の機体でやるだけです。先方が、「今回の件で、中国製の機体が使えないんですよ!」と言ってきたら、「予算は10倍以上かかりますが、それで大丈夫なら進められます」ということです。
とはいえ、世の中的には問題は山積みです。DJIの機体のような値段や性能、手軽さコンパクトさのある機体は、日本には一切ありません。これからドローン産業がますます発展していきます。その中で、中小企業が手が出せるのは、値段が安く安全性は高い機体です。
このニュースで言っている安全性の低さは、情報のことだけじゃないですか。情報に対しての安全性に問題があると言っているだけです。ドローンは飛ぶものです。一番必要なのは飛行時の安全です。運行の安全性に対しては、DJIは相当気を使っています。中国製の機体と同じだけの安全性で、果たして日本製の機体は飛べるのか。
実は、中国製の機体のほうが安全なんですよ。いろいろな意味で。このことは、私も立場があるので、こういう場ではあまり深く言えません。裏事情を知っているから、本当は言いたいのですが……。もし聴いてみたい人がいたら、うちのお店にでも来てください。事細かにお話します。
うちは15年以上前からドローンの操縦を学べるスクールをやってきて、ラジコンのヘリや飛行機も教えてきたから分かるのですが、これからは、ラジコンの知識や技術が重要になります。これまではDJIの機体が主流だったのであまりラジコンの知識や技術はいりませんでした。非常にシステムが優れていて、誰でも簡単に浮かせらたからです。しかし今後は、ラジコンのことが分からなければ、日本製の機体は飛ばせないでしょう。機体の構造や操縦などが複雑で難しくなるからです。バッテリー1つでも、充電の仕方が難しい。
――ラジコンの知識や技術とは、具体的にどういうものなのですか?
ラジコンの電波やシステム、バッテリー充電などです。あとは操縦に関しても。ラジコンだと、これらの勉強をしなければなりません。
実は、日本製の機体もラジコンと同じです。日本製の機体は、部品がバラバラです。送信機はこのメーカー、コントローラーはここ、モーターはここという具合に。それで機体を買ったら、「モーターはどこのものをつけようか」「送信機はどういうものを使おうか」「電波はどうする」「FPVはどうしようかな」……と、一個一個を考えなければなりません。勉強が必要です。一方、DJIの機体は、送信機まで含めて全部同じメーカーが作っています。一個一個考えなくても済みます。
もちろん日本製のドローンでも、オールインワンで考えているところはあります。ただ、関係者に話を聞くと、数百万円はかかるようです。コストが高いですよね。
これは日本製の性能が悪いのではなくて、コストパフォーマンスが悪いんですよね。コストパフォーマンスは、これから産業全体が発展していくうえで、非常に大事だと思います。高すぎれば導入できる企業が少なくなります。
こうしたことから、今は、DJIの機体を使わないと仕事にならないことが分かります。私の元に、「DJIじゃない機体を作ってほしいんですけど……」と依頼があれば、もちろん作りますが、「値段が一桁ほど変わりますが、それでもいいですか?」と聞きます。そういう話です。
――中村さんは、機体を作ることもしているのですね
そうですね。今ここにある2つの機体も、最近作りました。同じように見えますが、手前はDJI製です。7~8年前のシステムを使っています。アンプなどは新しいものを使ってます。奥はアメリカ製です。システムは最近のものです。それぞれ、違うコントローラーを積んでいます。アンプも別々のものです。ただ飛ばしてみると、DJIのほうがよく飛びます。7~8年前のものにも関わらずです。めちゃくちゃ飛ばしやすいですね。
――この2台は、何を目的に作られたのですか?
これは、うちの生徒さんの飛行練習用に作りました。同じ機体があっても面白くないので、2種類作りました。ドローンの仕事では、現場やクライアントによってさまざまな種類の機体を飛ばさなければなりません。そこで、練習の段階で癖の違う機体を飛ばしてもらっています。そのほうが、より実践的だからです。
――これらが飛ばせるようになると、どんな技術が身につくのですか?
自由に機体が操れる技術が身につきます。その結果、より安全に、より精度の高い仕事ができます。例えば動画の撮影なら、動きの速いものや激しく動くものを撮れます。また、細かい操縦で点検や調査などもできるようになります。より精度の高い結果を出せるので、クライアントに喜んでもらえます。その結果、仕事を繰り返し依頼してもらえるでしょう。
日本が中国製を排除したら、中国メーカーはどうするか? 21:53
もっとすごい機体を作ってくると思いますよ! もっと小型でもっと性能がよいものを。「その機体を使わないと絶対に仕事ができない」みたいな。「中国製を使わないと仕事にならん!」となるかもしれません。もしくは、「もう日本で儲けるだけ儲けたから、後は知らん!」となるかも(笑)。日本やアメリカはもういいやって。どうぞ後はご自由にやっててくださーいって。DJIが本気になったら、もっとすごいものを作ってきますよ。それにどうやって日本は対抗していくのか。
日本の技術は遅れています。私はもう10年以上前から、さまざまな日本のメーカーに「産業用のドローンを作れ」と言ってきました。「今やらないとダメだよ」「これから絶対にドローンが必要とされるから」「やんなよ、やんなよ! やんなよ!!」と、口を酸っぱくして言ってきました。そうすると、「お金にならないから……」という反応ばかりでした。「DJIがやってるからいいんじゃないすかね」みたいな。
それでも、最近は一部の企業が前に進み始めました。例えばこの間、双葉電子工業さんが900メガヘルツ帯の送信機を出してくれました。これはもう5年くらい前のホビーショーから、私がずーーっと提案していました。「出して!」「出したほうがいいよ!」と。こういうことは、遅れがちな日本の産業としては、大きな進歩だなと感じました。
今後、日本のメーカーの姿勢はいっきに変わるか? 25:47
――開発の現場はそんな感じなんですね。でも、これから一気に変わるかもしれない
ええ、やる気になった日本を見てみたいですね。底力はあると思います。この間、ドローンの展示会(ジャパンドローン2020)に行ったときに、やる気を感じました。ただ、果たして現場で通用するレベルになれるのだろうか。そういう思いもあります。日本製の機体は飛ばすことに関して、DJIの機体よりも難しいからです。もちろん、日本は「みちびき」という衛星を使いだしたので、それが日本の機体で使えるようになれば、より飛行の正確性は増すでしょう。実際、そうした話は、大手メーカーの大型機であれば聞こえてきます。しかし、小型でリーズナブル、仕事でも使いやすい機体となると、まだまだ遅れています。今後に期待するしかありません。
――機体の問題のほかに、パイロットの問題もありますか?
ありますね、パイロットもきちんと育てないといけません。日本製の機体が増えてくれば、もっと操縦が難しくなってきます。操縦だけではなく、機体自体の知識や整備技術も必須です。
これからドローンパイロットが生き残るために必要なこととは? 31:54
これからは、中国製のドローンを扱えればいい時代ではなくなります。クライアントから、「この機体を飛ばしてください」と頼まれて、「それは飛ばしたことがありません……」となるのは、プロ失格でう。プロは出された機体を全部飛ばさなくちゃいけません。
――だから、中村さんのドローンスクールは、長い人だと卒業まで1年くらいかかるのですね?
そうです、いろいろな機体を飛ばしてもらったり、機体を作る勉強もしています。そういうところに力を入れています。「Phantom」みたいに、誰でも飛ばせるものは、別にプロが教えるものではありません。生徒さんに教えなければならないのは、「GPSやGNSSなどの信号が切れたらどうやって飛ばすのか」「強風の中でどうやって飛ばすのか」「クライアントから出された機体をどう飛ばすのか」といったことです。仕事で直面することしか、少なくともうちは教えていません。よそは分からないですが。
――仕事で活躍できる本物のプロパイロットを育てているんですね
はい。生徒さんには、入学前にきちんと言っています。「うちに入ったからと言って、プロになれる保証はまったくないですからね」と。それでも、皆さん一生懸命に練習しています。その姿を見るのは、講師として最高ですよね。
――すでに現場で活躍している方もいらっしゃる?
結構いますよ。現場でバンバン飛ばしています。今度ね、うちのホームページにも出演してもらって、仕事の様子を話してもらおうと考えています。それで、どういう仕事っぷりかが分かると思います。
現場でドローンを飛ばすプロたちにはどんな影響があるか? 34:17
――今回のニュースは、現場で飛ばしている方たちにもどういう影響があるのでしょうか?
今後、国からの仕事では、DJIの機体を飛ばせないでしょうね。うちは測量関係の方たちとも一緒によく仕事をしますが、国の管轄する土地であれば、日本製の機体じゃないと飛ばせないかもしれません。そうなれば、高いコストを払える会社しかドローンで仕事ができなくなります。もし測量屋さんが「うちはできません」と断っちゃったら、一体どこがやるんだって話ですよね。
ちょっと測量の話になりますが、測量はどんなにいい機体を使っても、「ノウハウ」が分かっていないと出てくる結果は悪いです。よくあちこちの測量屋さんに、「ドローンを飛ばせば誰でも簡単に測量ができるんでしょ?」と言われます。「今は自動航行で、ピッと飛ばしてポッとやってパッと結果が出るんでしょう」と。そんなことあるわけないじゃないですか!「ちゃんとノウハウを分かっている人間が飛ばさないといけません。よい結果を踏まえて飛ばさないと、いい測量はできません」と、私はずーーっと言ってきました。そんなに簡単じゃありません。
測量のノウハウというのは、例えば「今日はこういう天気だから、このくらいの高さや角度で、これだけの枚数を撮る」といったことです。それはほんの一部ですが、よく分からずに飛ばしても、いい結果は出ません。
――それは、現場でドローンを飛ばす経験が長くないと分からないことなのでしょうね
そうですね。もちろんドローンの操縦経験だけでなく、測量会社さんの持つ知識も必要です。うちで言えば、私の技術と協力企業の知識が合わさって、始めて高い精度が出せます。前にどこかのメーカーさんで、「当社の機体は測量専門だから、誰がやってもパッと飛ばせてすぐに測量できます」というものがありました。しかし、それ今は現場で見かけないですからね。
政府機関や関係者たちにはどんな影響があるか? 38:05
話を戻しますが、今ドローンを使っている現場は、これから止まってしまうところが出てくるかもしれません。それほどDJI製の機体は優れています。別に私は、中国製を押しているわけじゃありません。ただ、それほど低価格で性能がいい機体が今の日本にはないのです。
――そうした国がらみで仕事をする人たちに、何かメッセージはありますか?
がんばってください(笑)、と。
――中村さんのところに相談に来られる方もいるんですか?
いますよ。実は国の人たちも、「うちは機密とか関係ない部署なので、DJI製品を使いたんですけどね……」なんて言っています。今の時期にこんなことバラしたら怒られちゃうかな(笑)。でもそう言っていますよ。
重要インフラとか機密性の高い情報を扱うところ、例えば防衛とか犯罪捜査みたいなところじゃなければ、DJIを使ってもいいと思うんですけどね。そういう人たちも、民間のためにドローンで監視や点検をしょうとしているわけだし。実際、私のほうにも、「もう待っていられない。DJIの機体で仕事をしたい」と相談が来ます。現場でやっている方たちも、しびれを切らしているようです。私は、「国が大丈夫であれば、うちは全然OKですよ。お手伝いさせてもらいます」と言っています。うちは飛ばす知識と技術を教えているので、中国製だろうが日本製だろうが関係ありません。より安全に、より正確に仕事ができるパイロットを育てるだけです。ただ、DJI製品が使いやすのは事実です。
――日本は、自分で自分の首を締めるかもしれないのですね
そうかもしれませんね。どれだけ日本のメーカーさんが奮起して、安くて性能のよいドローンを作ってくれるか。私も、もともと開発にも携わっていたので、本当はそちらにも貢献しなくちゃいけないのですが。今はプロパイロットを育てることに集中していますので。
――小さくて安いのは、日本が最も得意そうですが
得意そうですけど、今はまったくないですからね(笑)。
――今後に期待するしかないですね
そうですね。でも、小さくて性能がいい機体は、中国に持っていかれちゃうんじゃないですかね。すでに今だって、こんな数cmのトイドローンがありますからね。しかもカメラも積んでいます。
もちろん中国製の機体を排除するのは、国民の安全を考えてのことだと思うんですよ。ただ、政府機関のほうでも、もっともっとドローンのことを勉強してほしいですよね。
もしも政府に提案するなら? 43:42
――では、もしも中村さんが国に提案するなら、どんなことを伝えますか?
理想は、日本がDJIに対して、「お宅の技術はすばらしいから、ぜひ知恵を貸してくれないか」と伝えることです。一緒に開発をやってほしいと頼むべきだと思うんですけどね。「本当によいモノづくりをしたい。安全性を高めたい。だから知恵を貸してほしい。一緒に手を組んで、世界のために役立つ機体を作っていきましょう」と。中国も、日本の製品がいいのはよく分かっているはずですからね。一緒にやれば、もっともっといいものができるでしょう。ただ、そこには利害関係とか政治的なことがあって難しいのかもしれません……。
最後にお伝えしたいことは? 46:33
よりよいドローンの機体を選んで、よりよい練習をして、毎日安全に楽しく飛ばしていきましょう、ということです。
まさか今後、中国製の機体は輸入禁止にはならないと思っています。今回のニュースは、「政府が中国製の機体1000機を排除する」というものでした。あくまで、政府機関や関係者に当てはまる内容です。一般のドローンパイロットさんたちにはあまり関係がないことです。今までどおり、DJIの機体で空撮を楽しんだり、飛ばす練習をしたり仕事をすればいいでしょう。ただ、輸入禁止となれば、話は別です。非常に困ってしまう人たちが出てきます。うちも取引させてもらっている代理店さんなんかは、まさにそうですね。そこまで私も国の方針は分からないので、輸入禁止になっちゃたらごめんなさい(笑)。
日本も、DJI製品に助けられてきた部分がいっぱいあるんですよ。だから、本当は中国製も日本製も、両方が扱えればそれが一番いいんですけどね。とにかく、私たちは日々、安全に楽しくドローンを飛ばして参りましょう。