※内容は、2020年に収録したものです

いいインストラクターとは?

いいインストラクターは、ラジコンの「飛行機」や「ヘリコプター」も飛ばせます。4枚の羽がついたドローンだけを飛ばせるのでは不十分です。インストラクターさんに聞いてみてください。「ラジコンのヘリや飛行機は飛ばせますか?」と。

そもそも「ドローン」の意味を理解していないインストラクターが多いです。まず、一般的に「ドローン」と聞くと、回転する羽が4枚ついている機体を思い浮かべるかと思いますが、実はこれ、間違いです。正しくは、この機種の固有名詞は「マルチコプター」といいます。「ドローン」=「マルチコプター」です。また、「ドローン」は「無人航空機」全般を指す名称です。無人航空機は、英語で「UAV(Unmanned Aerial Vehicle)」といいます。UAVには、ラジコンの飛行機やヘリコプターも入ります。つまり、「UAV(無人航空機)」=「ドローン」=「ラジコンの飛行機やヘリコプター、マルチコプター」です。

もし「ドローンパイロット」と名乗る人がいたら、「マルチコプター」だけでなく、ラジコンの飛行機やヘリコプターも飛ばせないとおかしいのです。ラジコンや模型の知識が土台となっているのが「マルチコプター」です。土台となる知識がないのであれば、本物の「ドローンパイロット」とは言えません。

ベテランとはどういう人なのか?

ドローンスクールの広告を見ていると、「ベテランのインストラクターが教える」と書かれていることがありますが、ベテランとは、UAV(無人航空機)全般を操縦できる人のことを言います。

「マルチコプター」しか飛ばせないのは、ベテランとは言いません。「ドローン」=「UAV」なので、ラジコンの飛行機やヘリコプターも飛ばせないといけません。例えば、測量の仕事現場では、状況によって「マルチコプター」ではなく「固定翼航空機(UAV)」を飛ばすことが求められる場合があります。また、農薬散布の仕事も、ヘリコプターでやるほうが割合としては多いです。なぜなら、マルチコプターよりも一回で飛べる時間が長く積める農薬の量が多いからです。

ラジコンの飛行機やヘリコプターを飛ばせる人は、「マルチコプター」だけしか飛ばせない人よりも技術が高いです。「マルチコプター」は、技術の習得に時間はそうかかりません。また、今は自動で動くようプログラミングもできます。しかし、マルチコプターが飛ばせても、ヘリコプターはそう簡単に飛ばせません。なぜなら、ヘリのほうがより細かい操作が求められるからです。その分、技術力は高くなります。

もしマルチコプターでクオリティの高い空撮の仕事をするなら、ラジコン飛行機を飛ばすテクニックがないとできません。細かい操縦技術が、動画撮影をするときに必要になるからです。こうしたことを一般のインストラクターさんたちがどこまで知っているのかは、私にはわかりません。しかし、プロやベテランを名乗っている人がいたら、ぜひ「UAV全般」が飛ばせるかどうか、確認してみてください。

GPSなしで飛ばせないインストラクターはアウト

インストラクターが、GPSを切った状態で飛ばせないのはダメです。GPSとは、機体が自動的にその場でホバリングしてくれる機能です。これがあれば、初心者でも簡単にマルチコプターを飛ばせます。そのため、ドローンスクールのなかには、GPSの入った状態の操縦しか教えていないところもあるようです。しかし、仕事現場では、GPSが入らないなんてことはしょっちゅうあります。そうなれば、完全に手動で操縦するしかありません。手動での操縦を教えられるのは、GPSなしで飛ばせるインストラクターだけです。

プロなら、あらゆる事態に対応できるよう手動での操縦ができないといけません。例えば、よく私は、自然災害で崩れた現場の調査を依頼されます。そこでは、風があるなか完全手動でマルチコプターを飛ばします。もちろん仕事のなかには、GPSが入った状態でもこなせるものがあります。しかし、そういう仕事であれば、わざわざドローンスクールに通わなくてもできます。GPSを切った操縦方法を教えてもらえるから、生徒はスクールで学ぶ意味があるわけです。

いいインストラクターかどうか見抜く方法

いいインストラクターかどうかは、技術だけなら「モード1」で操縦しているかを見ればいいです。

「モード」というのは、マルチコプターの操縦方法の種類のことです。現在は、「モード1」と「モード2」が主流です。これらは、車でいえば右ハンドルか左ハンドルかくらい操縦感覚が変わります。一つのモードで長年操縦していると、手癖が固定されてしまい、もう一方のモードでいつもどおりに操縦するのは非常に難しくなります。

「モード1」は、日本で活躍するうまいパイロットの多くが使っています。日本でマルチコプターが飛び始めたのは10年くらい前です。それ以前は、日本には「モード1」しかありませんでした。だから、「モード1」で操縦するインストラクターは操縦歴が長いはずです。

「モード2」は、ここ5~6年でマルチコプターを始めた人の多くが使っています。もともと「モード2」は、日本にほとんどありませんでした。海外から安いおもちゃみたいな機体が入ってくるようになり、それが「モード2」のまま売られるようになったので普及しました。つまり、まだ「モード2」が使われ始めてから日が浅いのです。「モード2」で飛ばすインストラクターがいたら、その飛行歴は長くても6年ほどになります。

よく私の店には、ドローンレースの全日本チャンピオンや世界選に出場している選手が出入りしますが、そのパイロットたちは「モード1」ばかりです。彼らに一度、こう聞いたことがあります。「『モード2』が流行っているから、やっぱりこっちのほうがいいのかな?」。すると、「いや、モード1のほうが細かく動かせるし、微妙な調整が効くので操縦しやすいです」と言っていました。それは私もよく体感します。例えば、橋の点検の仕事で、橋の裏側にマルチコプターを飛ばすことがあります。「あと1cmも行ったらぶつかる」というところまで飛ばしますが、そういう操縦は「モード1」じゃないと難しいです。

もちろん、「長く飛ばしている=いいインストラクター」とは限りませんが、「モード1」で操縦している人は、飛行歴は長い傾向にあります。

飛行時間の嘘と本当

よくドローンスクールの広告に、「飛行時間○○時間」と載せているインストラクターさんがいますが、これは本当でしょうか?「○○」の中には、1000時間とか2000時間、長いと3000時間という数字が入っています。どれだけの時間を飛ばしているかで、実力を表現しているのでしょう。

もしかしたら、この数字には誇張があるかもしれません。まず前提として、私の飛行時間の数え方は、「機体が離陸した瞬間から着陸した瞬間まで」です。飛ばしていない時間はカウントしません。当然ですよね。

次に、機体を飛ばせる時間を考えなければなりません。最近の機体であれば、バッテリー1本あたり約30分です。昔の機体であれば、バッテリー1本あたり約10分しか飛びません。その場合、1時間飛ばすには6回のフライトが必要になります。また、バッテリーの充電は長くかかります。そのため、連続で何時間も飛ばすには、休みなくバッテリーを交換するか大量のバッテリーを用意するしかありません。そのため、ここは疑問が残るところです。

また、体力的にどれだけ飛ばせるかも考えなければなりません。初心者であれば10分ほど飛ばしたらけっこう疲れます。45年飛ばしている私ですら、1日2時間も飛ばしたらヘトヘトになります。一度でも機体を飛ばすとわかりますが、飛行させるのは相当神経を使います。

そこで、果たして2000時間、3000時間飛ばすとなると毎日何時間飛ばして、何年かかるのかという疑問が湧いてきます。仮に毎日2時間、200日飛ばしたとしても1年で400時間です。3000時間飛ばすには、8年近くかかる計算です。

実際の現場ではずっと飛ばしっぱなしというわけではありません。例えば、この間私は、早朝から日暮れまで現場にいて、朝2フライト(15分2回)、午後に3フライト(15分3回)飛ばしました。合計1時間15分です。1日仕事をしたとしても、それくらいしか飛ばせません。移動などの時間のほうが長いのです。年間200日、現場で2時間飛ばすというのはかなり極端な例なので、実際にはもっとゆっくりのペースで考えるのが妥当です。そうすると、3000時間飛ばすには数十年の飛行歴が必要です。

あまり飛行時間は当てにしないほうがいいかもしれません。もしかしたら、彼らは、飛ばしていない時間も含めて数えているかもしれません。例えば、1日の勤務時間を8時間とし、飛ばしていない時間も飛行時間に含めている。そうしないと、なかなか何千時間というのは達成できないものです。ぜひインストラクターさんに聞いてみてください。「飛行時間は、離陸した瞬間から着陸した瞬間までをカウントしていますか?」「毎日、何時間飛ばしていますか?」と。

手元を見てプロかどうか見抜く

ラジコンの飛行機やヘリコプターを操縦している人とマルチコプターしか操縦したことのない人の手元は、一目瞭然です。

上手い人は、親指が送信機のスティックに対して立っています。逆に、マルチコプターしかやったことがない人は、スティックに対して親指が寝ていることが多いです。親指を寝かせると細かい操作がしにくい。マルチコプターは基本、機械が制御しているので、適当に動かしても動きます。しかし、手動での細かい操縦は、親指を立てないとできません。

また、上手い人は、送信機を持つ手が下すぎず上すぎずのいい位置にあります。下すぎたり上すぎたりすると、すべてのレバーに素早く指が届きません。結果、繊細な操縦ができなくなります。こちらのほうが、親指よりも見た目としてはわかりやすいでしょう。

手元は習慣なので、必ず目に見える癖として現れてきます。おかしな癖がつくとすぐにわかります。一度、ドローンのプロパイロットを名乗っていたすごい人に会いました。その人は、どこかのドローンスクールの資格も持っていました。しかし、スティック操作はというと、親指で「バン、バン!」と叩くようにして動かしていました。繊細な動きどころか、0か100かです。これでプロを名乗るはいかがなものでしょうか。プロかどうかを見抜くには、口や資格ではなくぜひ手元を見ましょう。

どんな性格のインストラクターがいいか?

「初心者の目線に立ってくれる」「生徒が理解するまで教えてくれる」、そんなインストラクターが理想です。

気をつけたいのは、初心者の立場で考えられない人たちです。例えば、中途半端に技術があるインストラクターの中には「オレってすごいだろう?」といばる人もいます。また、初心者さんに対して、「こんなことも知らないのか?」くらいのことを言う人もいます。「スクールに来てんだからそれくらいは勉強しとけよ!」「そんなこと知ってて当たり前だろう?」と。それではいけません。生徒は初心者です。教える側は、そのことを自覚していないといけません。

生徒が理解できるまで教えてくれる人を探しましょう。例えば、最初から専門用語ばかり使われては困りますよね。噛み砕いて教えてもらえなければ、理解が進みません。そこでインストラクターは、生徒に説明した後、もしその人が理解できていないなと思ったら、教え方を変えなければなりません。そうせずに先に進んだとしても、生徒の上達は望めません。

ぜひ初心者の気持ちがわかり、理解するまで教えてくれるインストラクターから学んでください。

マルチコプターしか飛ばせないのはダメ?

仕事現場ではUAV(無人航空機)の飛行技術が幅広く必要になるので、マルチコプターしか飛ばせないのではインストラクターとしても不十分です。それでは、実際の現場で使われる技術を教えられないからです。この間、あるドローンスクールのインストラクターさんと話す機会があり、驚いたことがありました。その人に、私は雑談として「GPSが入らない現場だと飛ばすのは難しいですよね」と、気軽に話しかけました。すると、その人は「えっ!? GPSって切れるんですか?」と言い返してきました。驚きました。逆に、「GPSを切らなくても飛ばせる現場でしか仕事をしたことがないんですか!?」と聞き返しそうになりました。その人は、間違いなくマルチコプターしか飛ばせないパイロットです。「どこでもGPSが入ると思い込んでいるインストラクターがいるんだな……」と、私はびっくりしました。

現場で求められる技術と
スクールで学ぶ技術のギャップ

ドローンスクールを卒業したからといって、仕事で通用するとは限りません。例えばこの間、あるお客さんが私のお店に来て、こう尋ねてきました。
「○○のスクールを卒業して資格を取りました! 仕事を紹介してくれませんか?」。
「いいですよ」と私。というのも、私は企業と提携しており、仕事をこなせそうな人にはドローンの仕事を紹介しているからです。
「うちの仕事を受けるには、簡単な操縦テストに合格しないといけません。大丈夫です。本当に簡単ですから」。そういって、その人にテストを受けてもらいました。しかし、残念ながら合格できませんでした。
「ごめんなさいね。それでは仕事は紹介できないんです……」。そう言って、丁重にお断りさせてもらいました。
これは、その人が悪いわけではありません。どの程度の技術が現場で求められるのか、その人がわかっていなかっただけです。自分ではいい線をいっていると思ってうちに来たようで、ガッカリして帰っていきました。実際の仕事現場のことを、そのドローンスクールは教えていなかったのでしょうか。不思議です。

本物のインストラクターには
簡単に出会えない

マニュアルに書かれたことしか教えられないインストラクターは多いです。その理由は、このドローンという分野が、まだまだ新しいからです。私が仲間と一緒にマルチコプターの開発や普及をスタートさせたのは、今から15年ほど前です。それから、世間の人たちがドローンを認識し始めたのは、今から5~6年前ではないでしょうか。マルチコプターは20~30年前からあったわけではないので、深い知識や高い技術のある人はあまりいません。

経験が少ないと、現場で役立つ知識や技術を教えられません。現場でよく起こる不測の事態やその対処方法などは、経験者しか知らないことです。そのため、経験が豊富な人から教わらないと、ドローンスクールで過ごす時間を無駄にしてしまうかもしれません。

経験が少ないと、飛ばすことを簡単に考えます。例えば、私は国が管轄する独立行政法人「水資源機構」の契約パイロットとして、ダムの撮影を任されていました。ダムの撮影というと、「ダムは広いから撮影は簡単でしょう?」と言われることがあります。しかし、とんでもないです。気象や地形、ダムの構造など、幅広い知識や技術、経験がないと、機体を安全に飛ばし、無事に帰ってこさせることはできません。

経験が少ないと、事故を起こします。以前ニュースで、マルチコプターを墜落させてしまった事故が報道されていました。子供たちの上に落として、たくさんの怪我人を出してしまったようです。私も気になって調べたところ、実はこれ、飛ばす前から落ちることがわかるものでした。パイロットの知識不足が招いた事故です。もちろん防げない事故もありますが、防げるものは防ぐのが本物のプロです。

こんな人が多いため、簡単には本物のインストラクターに出会えないかもしれません……。

インストラクターの持つ資格は、
実力とは無関係

インストラクターの持つドローンの資格は重要ではありません。資格があっても、うちのドローンスクールの簡単な飛行テストに落ちる人も多々います。一方、無資格でも、現場で活躍するプロパイロットはちゃんといます。

インストラクターがドローンに関する資格を持っていても、それは重要ではありません。なぜなら、そうした資格は実力を証明するものではないからです。もし自動車免許なら、取れば日本中どこでも通用します。しかし、ドローンの資格はそれぞれの団体が発行しているだけです。その団体を出てしまえば、まったく意味がなくなります。

例えば、どこかのドローンスクールで資格を取った人が私のスクールの簡単なテストを受けても、落ちてしまうことはよくあります。また、逆のパターンもあります。ある人は、うちで講習を受けた後、自分の会社の都合で他のスクールの資格も取ることになりました。そこで、うちよりも日数や時間、費用のかかるスクールに通いました。しかし、その内容は、うちのレベルの半分にも満たなかったと言っていました。「だんだんムカついて、途中でキレて帰ってきちゃいました!」と、3日目で辞めたそうです。

ドローンの業界には、無資格でも幅広い知識や高い技術、豊富な経験のあるパイロットは確実にいます。そういう人は、資格がなくても上手に機体を飛ばせます。だから、仕事も取れます。この業界は、資格があるから仕事がもらえるわけではありません。もちろん、資格を発行する団体と仕事を斡旋する企業がつながっている場合は別です。「その団体の資格がないと仕事は出せません」というところだった場合、資格が必要です。ただ、そういう場合でも、資格は実力を証明しているわけではありません。いいインストラクターかどうかは、資格では判断できないのです。

こんなインストラクターなら
仕事で活かせる知識が学べる

そのインストラクターがドローンの資格以外に、例えば何らかの国家資格を持っていた場合、マニュアルしか教えられない人よりも多くのことを教えてくれるはずです。なぜなら、国家資格があれば仕事の幅が増えるので、多くの経験を積めるからです。ドローンの仕事は、飛行技術だけあってもダメです。仕事内容に応じて、気象や電波、建造物、ラジコン、模型などの幅広い知識が必要です。そうした知識がある人とない人とでは、撮れる映像も変わってきます。また、事故の確率も違います。

さらに、もしそのインストラクターが経験豊富であれば、活きた知識を教えてくれるはずです。プロは、必ず現場で怖い目に合っています。また、失敗もよくしています。そうしたことを事前に教えてもらえれば、生徒は、同じ怖い思いや失敗をしなくても済みます。「知識があったから事故を防げた」ということはよくあります。だからこそ、インストラクターを見るときは、資格よりも過去の経歴のほうが大切です。

教えてもらう際は、マンツーマンがいいか?

学ぶときは、1対1でじっくり質問できるのが理想です。生徒はそれぞれ、理解や技術の習得度が違います。インストラクターが誰に対しても同じ教え方をしたら、ついてこられる人とついてこられない人が出ます。私も、昔は定員4名でやっていましたが、多いと感じていました。やはりマンツーマンがいいですね。

大切なのは、質問しやすいかどうかです。初心者さんはわからないことだらけです。わからないとき、すぐにインストラクターに質問できるかどうかで、その後の成長度が変わってきます。これが、もし複数の生徒がいたとしたら、ある生徒の質問内容は、他の生徒には関係がない場合があります。その場合、他の生徒は時間が無駄になってしまいます。そのため、1対1でじっくり質問ができるのが理想です。

姿勢・手元を見てくれるのは、
いいインストラクター

いいインストラクターは、生徒の姿勢や手元まで見てくれます。どんな世界でも、姿勢や手元というのは、決まった型があります。例えば、ゴルフでも野球でも「こう振る」という型があります。そこを基本として確実に押さえておかなければ、プロのゴルファーやプロのバッターにはなれません。マルチコプターの操縦にもそうした基本の型があります。それを教えてもらえなかったら、生徒はうまくなりっこありません。

全体を見ながら、間違いがあれば正してくれるインストラクターを選んでください。初心者さんは間違ったやり方を間違っていると気づけません。指摘してもらえないと、間違ったまま続けてしまい、悪い癖がつきます。悪い癖がついてしまったがために、機体の操縦を誤り、事故を起こしてしまう。そういう人は、どこそこのドローンスクールを卒業している人の中にもいます。機体の動きは、送信機の持ち方や親指のスティック操作だけでも大きく変わります。もし生徒が正しくない持ち方をしていたら指摘をする。それができるインストラクターに教えてもらえれば、上達はグッと早くなります。

他のコースや機体を売り込まれたら?

インストラクターの中には、生徒に他のコースや機体を売り込む人もいるそうです。それは、初心者さんにとっては不安なことでしょう。では、売り込みにあったら、どうしたらいいのでしょうか。

私としては、生徒の目的に合わせて最適なコースや機体を勧めるのであれば、それはいいことだと考えています。例えば、私は入校を考えている人に、どのレベルを目指したいかを最初に聞きます。私のドローンスクールは初級・中級・上級・それ以上と、コースが分かれています。そこで、「趣味で空撮をしたい」という人なら初級だけでいいですよと言います。「うちで少し稼げるくらいの仕事がしたい」という人なら初級を卒業後、中級を勧めます。「あらゆる仕事がしたい」という人なら中級を卒業後、上級を勧めます。「安定した年収を稼ぐ本物のプロパイロットになりたい」という人なら、上級を卒業後、それ以上のコースを勧めます。また、機体に関しても、まだ様子見の人にはレンタルを勧めます。一方、どんどん上を目指したい人には、最初にそれ相応のものを買ってもらいます。なぜなら、同じ機体に長く触れていたほうが上達は早いからです。その人のやりたいことに合ったコースや機体を勧めるのは、知識や経験のあるインストラクターの務めだと考えています。

しかし、インストラクターに勧められるままにコースや機体を決定してしまうのはいけません。マルチコプター(ドローン)を飛ばすのは危ないことなので、簡単に考えてほしくないからです。私も、機体が落ちそうになる恐ろしさをしょっちゅう体感しています。これは私が商売下手なのかもしれませんが、自分のドローンスクールに入校を考えている人には、最初に、「落とす怖さ」や「プロになる厳しさ」などをしっかりとお話します。そして、「それでも本当に飛ばしたいんですか?」と聞きます。「簡単じゃないですよ。習得は難しいです。時間もかかります。大丈夫ですか?」と。例えば私のスクールだと、上級コースを卒業するには平均1年くらいかかります。それだけビッシリと学んでもらいます。途中で挫折した人もいます。どうしてこんなに厳しいかといえば、「頼まれた仕事ができない」のではプロパイロットではないからです。技術のレベルはきりがありません。一例を挙げると、以前私は、あるラジコン飛行機のプロモーションビデオ撮影で、30~40キロで飛ぶラジコン飛行機を、マルチコプターで後ろから追いかけて撮りました。こういう仕事も、操縦を簡単に考えていると事故を招きます。

もし「簡単に飛ばせますよー」「簡単に仕事が受けられますよー」というインストラクターがいたら、怪しいと考えてください。本当に現場で飛ばしているプロパイロットなら、「簡単」なんてことは言いません。もちろん、練習すれば誰でもある程度のレベルには到達できるはずです。しかし、それが1年かかるのか5年かかるのか、10年かかるのかは人それぞれです。そういうリスクも最初に説明しないと、誠実ではありません。私のスクールでは、テストに合格しないと次のコースにはいけません。ある人は、3回テストに落ちて、ドローンの仕事に就くことを諦めた人もいます。残念ですが、それでいいと思います。簡単な世界ではないのですから。

プロになるのにセンスはいらない?

よく聞かれることに、「飛ばすのにセンスは必要ですか?」というものがありますが、私は「練習すれば飛ばせますよ」と答えています。最初からセンスがあるかどうかは誰にも分かりません。もしセンスがなくても、猛練習をすれば開花することだってあります。だからこそ、最初から無理だと言わずに「まずやってみましょう」と答えています。

センスよりも、日々の練習と現場経験を積むことが重要です。毎日飛ばしている私でも、いまだに現場へ行くと震えることがあります。こうした恐怖を克服するために、毎日練習していると言ってもいいくらいです。プロパイロットになるには、センスよりも練習と経験が必要です。毎日どれだけ練習ができるか、誰に教えてもらえば経験が積めるか、そういったことを気にするといいですね。

室内ばかりで飛ばしている
インストラクターは避けるべし

室内でばかり練習しても、まったく練習にはなりません。なぜなら、仕事は外で飛ばすことが多いからです。そして、外で無風ということはほとんどありません。風速2~3mは当たり前。風速5mくらいで、「今日は風が強いので飛ばせません」ではプロ失格です。うちのドローンスクールでは、わざと風の強い日や山の上の上昇気流が強いところで飛ばす練習をします。普段から飛ばしにくい状況で飛ばしていれば、本番でも慌てません。室内だけでは練習にはならないのです。

もし、室内でしか機体を飛ばしていないインストラクターがいたら、教えてもらうのは避けたほうがいいでしょう。そういう人は、外の現場で仕事として飛ばした経験がないかもしれません。風のないところで飛ばすなんていう楽な仕事は、そうそうありませんから。

インストラクターの撮影した動画は要チェック

インストラクターの撮った動画を見るだけでも、腕の良し悪しがわかります。機体の操縦がうまい人は、動画の撮影もキレイです。動画作品は、カット数の少ないものがベストです。編集ばかりではダメです。ぶつ切りの映像をつなぐのであれば、わざわざマルチコプターで撮らなくても、スマホやホームビデオでもなんでもいいわけです。

プロパイロットは、ワンカットでキレイに撮影します。ワンカットでキレイに撮れるのが、マルチコプターの強みです。ただし、それには技術が必要です。なぜなら、撮影を止めずに飛ばし続けなければならないからです。

私は、ワンカットにすごくこだわります。この間、ある大きな病院の記念式典用の映像を撮らせていただきました。その際、病院内でマルチコプターを飛ばしました。通路に沿って飛行させたり、MRIや天井近くの梁の上をくぐらせたりして、院内を全体的に撮影しました。一発本番なので、やり直しはできません。また、飛行時間にも限りがあるので、長く飛ばせません。このときは、無事にワンカットで撮影を終えられました。そうやって撮った作品はクオリティが違います。クライアントも絶賛してくださいました。

ぜひ、インストラクターさんの動画作品をチェックしてみてください。「カット数が多い」「編集ばかり」という場合、高度な技術を教えられる人ではないかもしれません。もちろん、動画の見せ方として、ワンカットで撮った映像をカット数多めで編集することはあります。しかし、撮影時に何カットも撮っているのであれば、頻繁に撮影を止めている可能性があります。

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  1. 本物のインストラクターの見極め方
  2. 本物のカリキュラムの見極め方
  3. 資格や免許の嘘・本当の見極め方
  4. いい練習環境の見極め方
  5. いいサポートの見極め方
  6. 最適な入学費用の見極め方
  7. いい練習機の見極め方