※内容は、2020年に収録したものです

いいドローンスクールは、遠くても通うべきか?

もしいいドローンスクールが見つかれば、遠方でも通ったほうがいいでしょう。私のいう「いいドローンスクール」というのは、「現場で通用する能力が身につけられる」ところを指します。ドローンスクールは全国に200~300校あるみたいですが、スクールによってインストラクターやカリキュラムの質が全然違うため、生徒の習得できる能力にも差がでます。だからこそ、いいところが見つかればそこに行くべきです。通いやすいからといって近場で済ますことだけは止めたほうがいいでしょう。

今は、あちこちのドローンスクールが宿の手配や交通費のサポートなどをしています。そうしたところであれば、遠方でも通いやすいのではないでしょうか。注意点としては、「特典やサポート費用が受講料に含まれているにも関わらず無料と言っている」ことがあるかもしれないところです。そこは、じっくり確かめたほうがいいですね。

ただ、2~3日の短期集中型のカリキュラムでは、資格は取れても現場で通用する技術は身につきません。技術の習得は、月単位、年単位の長期的なカリキュラムでないと無理です。そうしたコースがあり、遠くからでも通いやすければ最高です。

オンラインで学ぶのは効果的か?

ドローンスクールのカリキュラムをオンラインで学ぶのは、効果的でないと私は考えています。その理由は2つあります。1つは、座学しか教えられないことです。知識だけなら、画面を通じて伝えることはできます。しかし技術は、実際に生徒の手元や姿勢を見ないと、おかしな癖がついていても指摘することができません。もう1つの理由は、先生と生徒の間で教え学び合う熱量が伝わらないことです。熱量は、同じ空間でしか感じられません。こうした空気感があると、お互いの信頼関係につながります。信頼があれば、生徒は質問がしやすく理解も早い。先生は、その生徒に合った内容を教えやすい。

だから、私はオンラインでの授業はやりません。座学の段階から、生徒とは同じ空間を過ごしたほうがいいと考えているからです。これはうちだけではありません。業態は違いますが、レベルの高い学習塾も同じことを言っています。もちろん、時代に合わせてオンラインも活用したほうがいいとは思いますが、マルチコプター(ドローン)の技術は、画面を通して教えられるほど甘くありません。危険なものを飛ばすわけですから。

屋内・屋外どちらの練習に力を入れているところがいいか?

マルチコプター(ドローン)は、基本の段階では、屋内も屋外もまんべんなく飛ばす練習をしたほうがいいです。ドローンスクールによっては、屋内でしか練習できないところもあるようです。屋内の練習は大事です。しかし、外で飛ばさないと経験できないことは山ほどあります。どちらも大切なので、両方に力を入れているスクールを選ぶべきです。

最初は、屋内での練習がオススメです。初心者の方がいきなり外で機体を飛ばすと、気象条件によっては操作が極端に難しくなるときがあります。風が強いと、すぐにコントロールを失ってしまいます。また、安全面のこともあります。めったにありませんが、誤操作で危険な飛ばし方をしてしまうことも。その点、屋内であれば壁や天井があるので、大きな事故につながりにくいのです。ただ、屋内だけの練習では仕事につながる能力は身につきません。

次は、屋外での練習がオススメです。外で飛ばすことで、風や気温、湿度などの影響でどれだけ操縦感覚が変わるかを体で理解できます。仕事では、風だろうが曇りだろうが、真夏だろうが真冬だろうが関係なく飛ばさなければなりません。そこで、私のスクールを例に出すと、あえて真夏の熱い日や真冬の手がかじかんでしまうような日に外で飛ばす練習をすることがあります。

プロは、さまざまな条件で機体を飛ばせないといけません。例えば、うちの生徒には、早い段階で上空150mまで上げてもらいます。ほとんどの人は、50mくらいでビビってしまいます。「こんなに上げて大丈夫なんですか!?」「こんなに高いんですね!」と言います。しかし、1回でも150mの高さを体験してしまえば、それより下は低く感じるものです。また、風速5m以内であれば、風のなかでの飛行練習を積極的に行います。風が強いと、生徒からは「今日はついてないなぁ」と言われます。でも私は、「逆だよ。ついてるよ(笑)」と返します。強い風の中で飛ばす経験が積めるのですから。

将来、ドローンの仕事に就きたいのであれば、日頃から屋内・屋外、両方の飛行に慣れておくことが大切です。両方の練習に力を入れているドローンスクールを見つけてください。

湿度や温度によって飛ばし方も変わる

マルチコプター(ドローン)の操縦感覚は、湿度や温度によっても変わります。例えば、晴れていて温度が高いと、空気は軽くなります。空気が軽いと空気の密度が減るので、ローター(羽)の回転数がいつもより上がります。揚力が低くなるので、回転数を上げないと空中でホバリングしていられなくなります。当然、回転数を上げるのでバッテリーの消耗が速くなります。そのため、バッテリーの消耗を頭に入れながら飛ばさないと、予期せぬタイミングで充電がなくなり、最悪落ちてしまいます。それがもし仕事中であれば、クライアントに損害を与えてしまうこともあるでしょう。こうした知識は、経験が豊富なインストラクターでないと教えられません。ぜひ、いいインストラクターを見つけてください。

シュミレーターは便利だが、実際の現場以上の学びはない

シュミレーターを使えば、さまざまな気象条件で飛ばす練習ができます。強風や上昇気流も自由に起こせます。バッテリーの消費時間も設定できるので、飛行途中で充電がなくなれば落ちたりもします。場所も、広い飛行場や廃屋、水辺など、さまざまに設定ができます。実際の外で飛ばせないときには重宝します。

シュミレーターで練習するときは、実際と同じように緊張感を持って飛ばさなければなりません。ゲーム感覚では、練習にならないのです。私のドローンスクールでも厳しくしています。「はい、今から風起こすからねー」「シュミレーターだからって、簡単に落としちゃダメだよ」「何十万円の高い機体飛ばしてるんだからね」「自分の機体だと思って飛ばしてー」なんて言うと、生徒からは「ええ~!」なんて言われてしまいますが(笑)。

ただし、あくまでシュミレーターは擬似的な練習ができるだけです。しょせん二次元の世界です。将来、VRが発達して、本当に風の中で飛ばしていることを身体で感じられるのであればいいでしょう。しかし、今はそこまで技術が追いついていません。だからこそ、本当に成長できるのは実際の現場で飛ばしたときです。現場以上に大切な練習場所はありません。

飛行練習場は広いほうがいいか?

飛行練習の場所は、広いに越したことはありません。例えば、測量の仕事なら、野球場やサッカーグランドくらいの広さは当たり前に飛ばします。だからこそ、練習の段階で遠近感に慣れておくといいです。また、遠くに飛ばすのがどれだけ危険か、どれだけ緊張するかも、練習段階で体験しておかなければなりません。そのため、飛行練習場は広ければ広いほどいいのです。

広いところも狭いところも飛ばせると稼げる

ドローンの仕事で稼ぐには、広い範囲と狭い範囲、両方の飛行ができるといいです。例えば、私はある大きな病院の設立記念の動画を撮ったことがあります。まずはオープニングムービーとして、上空150mまで機体を上げて、病院を含めた広い景色を撮りました。天気のいい日で、とても美しい景色です。そういう絵をキレイに撮るためには、広いところを飛ばす技術が必要です。次に、病院の入り口まで機体を降下させて、中へ入っていきました。院内は狭いので、飛行ルートは1cmの狂いも許されません。少しでもルートがずれると壁などにぶつかってしまい、クライアントに迷惑をかけてしまいます。そうならないためには、狭いところを飛ばす技術が必要です。他にも、よく私は大きな橋の裏側に機体を飛ばして、サビ具合やコンクリートの老朽化を調べる仕事をします。橋スレスレまで飛ばすので、かなり集中力がいります。また、工場内で機械と機械の間を飛ばすこともあります。高い機械なので、これもぶつけたら大変です。このように、広いところも狭いところもまんべんなく飛ばせると、仕事の幅がグッと広がり、稼げます。

理想の練習場所とは?

理想的な飛行練習場は、さまざまな状況で飛ばせるところです。マルチコプター(ドローン)を使った仕事では、環境や状況に合わせて機体を変えます。なぜなら、機体ごとにそれぞれ特性があるからです。特性も考えながら、あらゆる機体をあらゆる気象条件で飛ばせるのが、練習としては最高です。

以前、私が借りていた飛行練習場は、とても理想的な場所でした。車を400~500台ほど停められる駐車場があり、そこの一部を練習場として使っていました。広いので、生徒さんは気兼ねなく飛ばせます。そこでは、地面の高低差を利用した測量の練習もできました。また、敷地内に大きな建物があったので、外壁点検の練習もできました。さらに、周囲が山だったので、山の中での撮影練習もできました。他にも、近くにダム湖があり、そこではあらゆる気象条件で練習ができました。私は、ダムを管理する「独立行政法人 水資源機構」の契約パイロットだったので、許可をいただき、ダムの全景を撮る練習ができました。また、近くに上昇気流の発生しやすいポイントがあり、難しい条件下でも飛ばせました。ときには風速7~8mくらい吹くときもあります。怖いですが、生徒にとってはいい練習になります。その練習場でガンガン飛ばしていたある生徒は、今では「無風だと物足りませんね。面白くありません」なんて言います。「いやいや。本来、無風は安全なんだからねー。面白くないとかじゃなくて(笑)」なんて返しますが。

あらゆる機体をあらゆる気象条件で飛ばせる場所は、なかなか見つからないかもしれませんが、もし見つけたら上達の近道です。ぜひ、探すときの参考にしてみてください。ちなみに、私が使っていた飛行練習場は、台風のときの崖崩れで使えなくなってしまったので泣く泣く手放しました。今は、秩父地方の横瀬町内にある山や川、広いグラウンドや廃校の体育館などを町から借りて飛ばしています。そうそう、川も練習場所にいいんですよ。水面ギリギリを飛ばして撮る映像は、本当に最高です。

卒業後は、経験値を積むしかない

ドローンスクールを卒業してしまえば、あとは経験しかありません。あらゆる条件での飛行をどれだけ経験できるかが上達のカギです。経験値を積み重ねていけば、現場の仕事で不測の事態が起きても、落ち着いて対処ができます。それがプロです。

過去の経験の積み重ねが今の自信になります。例えば以前、私はある機関から、1000mの山に林道を作るということで、その下調査の撮影を頼まれたことがあります。建設中の林道を車で走り、山の上まで行きました。そこからマルチコプター(ドローン)を飛ばし、周囲を撮影します。現場に到着後、まずは、機体を離発着させられる場所を探しました。しかし、平らなところがなかったので、車の屋根に機体を置き、そこから離陸させることにしました。次に、機体を飛ばすルートを考えました。検討した結果、私自身は、車と撮影ポイントの間に立つことになりました。ところが、そこは断崖絶壁です。立つ場所の前後には1mくらいしか余裕がありません。実は私、高いところがダメでして……(笑)。高所恐怖症だけは、訓練でもどうしようもありません。だけれども、仕事なのでそんなことは言っていられません。気合いを入れて、なんとか仕事をやり遂げました。実は、このとき一番大変だったのは「高いところが苦手な自分とどう向き合うか」でした。苦手な状況でも仕事をこなせたのは、やはり長年積み重ねてきた経験が自信になっていたからです。

飛ばすための自信が身につくドローンスクールを見つけてください。インストラクターは現場経験が豊富か。飛行練習場はさまざまな状況で飛ばせるところか。卒業後は長期に渡っていろいろな経験をさせてくれるか。これらは、「スクール選びで絶対に妥協できないこと」です。いい練習場所でたくさん飛ばしてください。それが、長く稼げるプロパイロットへの近道です。

その他のビデオ講座

  1. 本物のインストラクターの見極め方
  2. 本物のカリキュラムの見極め方
  3. 資格や免許の嘘・本当の見極め方
  4. いい練習環境の見極め方
  5. いいサポートの見極め方
  6. 最適な入学費用の見極め方
  7. いい練習機の見極め方