※内容は、2020年に収録したものです
ドローンを飛ばすには、資格や免許が必要?
現在、マルチコプター(ドローン)を飛ばすために必要な資格や免許はありません。よく質問されることに、「免許がないと飛ばせないんですか?」「飛ばすための資格が、あなたのお店で取れるんですか?」というものがあります。しかし、免許や資格がなくても飛ばせます。
ただ、国土交通省の許可を得ていないと飛ばせない場所はあります。その場所で飛ばすときは、「国土交通省の飛行許可」がないと飛ばせません。飛行許可なしで飛ばすと、それは法律違反です。また、飛行許可があるだけでもダメです。例えば、機体が墜落し、事故を起こしてしまったとします。保険屋さんが来て、「あなたは国土交通省の飛行許可を得ていますが、本当にその定められた通りに飛ばせますか?」と聞かれて、そのとおりに飛ばせることを証明できなかったら、虚偽の申請をしたことになり、最悪、逮捕されてしまいます。
しかし、国土交通省の飛行許可を申請するには、何も資格はいりません。申請時に厳しくチェックされるわけではないので、乱暴な言い方をすれば、申請すれば誰でも取れます。だからこそ、私としては、この飛行許可申請を簡単に考えてほしくありません。以前、私のドローンスクールの生徒の中に、知識や技術が未熟にも関わらず、勝手に飛行許可を申請してしまった人がいます。その人には、申し訳ないけどスクールを辞めていただきました。マルチコプター(ドローン)を簡単に考えすぎなのです。危ないですから。飛ばすものなので。
資格がないと仕事がもらえない?
資格がなくてもマルチコプター(ドローン)を飛ばせる以上、資格がなくても仕事はできます。現場で通用する知識と技術、経験があれば、誰でも仕事を受けられます。現場は、資格ではなく、能力がもの言う世界です。
ただ、資格がないと仕事がもらえないケースもあります。それは、資格を発行する団体と仕事を紹介する企業がつながっている場合です。その場合、企業は、自分たちが指定するドローンスクールを卒業した人にのみ、仕事を与えます。理由はいろいろありますが、一つは言い訳のためです。仕事を与えたパイロットが事故を起こしたときに、「いや、私たちは資格を持っている人に仕事を与えましたよ」と言えるようにしているのです。また、資格を出す団体と企業が癒着しているということもあるでしょう。こういう場合は、資格がないと仕事がもらえません。まあ、そういうことはめったにないと思いますが……。
2022年の免許制について
マルチコプター(ドローン)の飛行に関して、今事故などの問題が多いので、国は2022年ごろにルールを統一しようとしています。それは、自動車免許のようなかたちになるかもしれません。そうなると、ドローンスクールは自動車教習所のように、どこのスクールを出ても、一定の知識・スキルを身につけさせなければなりません。しかし、それは難しいでしょう。車の運転とマルチコプターの操縦は、全然違うからです。生徒の操縦技術は、教えるインストラクターの腕に大きく左右されます。しかし、高い技術力を持ったインストラクターは少ないのが現状です。これからどういったルールができあがるのか、具体的なことは私にはわかりません。ただ、今より気軽に飛ばせなくなることは間違いありません。
実は、あまり報道されていないだけで、多くの人がバカバカ機体を落としています。例えばこんな話があります。以前、うちのお店に、機体を7台も持っていたにも関わらず、5台ほど行方不明にした人が来ました。「いや~、遠くまで飛ばしていたら帰ってこなくなっちゃって~。私も一徳さんのところで学びたいので、よろしくお願いします」と言われました。しかし、さすがに5台もの機体を行方不明にしてしまうのでは、私の教えられるレベルではありません。丁重にお断りさせていただきました。あと、こんな話もあります。私はあるお客さんに半分冗談で、「もし機体が欲しかったら、森とか山に行ってみてください。ごろごろ落ちてますよ」と言いました。するとその人は、「そんなわけないでしょう」と笑っていました。ところが数日後、その人が来て、「一徳さんホントでした! 森でファントム拾った!」なんて言ってました。「そうでしょう。秩父の森や山ですら落ちてるんですから、有名な山に行ったらもっと落ちてますよ」なんて話をしてました(笑)。それくらい、みなさん機体を落としちゃうんですよ。
免許制にしてもらったほうが、私としては嬉しいです。墜落や事故の話は、現場の第一線で仕事をしているとすぐに耳に入ります。そんなに墜落や事故ばかり起こしていたら、やがて国がUAV(マルチコプターを含む、無人航空機の総称)の飛行自体を禁止してしまうかもしれません。すると、UAVを使った仕事が何もできなくなります。それでは、日本のUAVは発展しません。何より私たちプロは困ります。だから免許制にして、一定のレベル以上のパイロットしか飛ばせないようにしてもらったほうがいいのです。
今から講習を受けておくと、将来免許制になったとき有利?
これは予想ですが、今のうちにドローンスクールに通って技術を磨いておくと、免許制になったとき、試験の実技で免除される項目があるかもしれません。自動車免許でもあるじゃないですか。別の免許を持っていれば免除になります、というものが。
しかし、そういうことよりも大切なのは、安全に機体を飛ばせるようになることです。安全に飛ばせない人が、ドローンスクールを卒業した人の中にも多いと感じています。例えば、あるスクールで資格を取った人が、うちのスクールの一番簡単なテストにすら受からなかったこともあります。資格よりも、きちんと飛ばすための技術が学べるかどうかに、意識を向けなければいけません。
もちろん、資格は、取れるなら取ったほうがいいと私は考えています。ただし、ちゃんとした資格です。ちゃんとした資格というのは、安全に飛ばせるインストラクターが教える、きちんとしたドローンスクールが発行するものです。そうしたスクールに通うことは大賛成ですが、今のうちに何でもいいから資格を取ろうとすることは反対です。
ただ、問題もあって、きちんとしたドローンスクールを見つけることは、初心者の方には相当難しいはずです。スクールは何百とありますし、広告もよいことばかり書かれています。そうしたなかで安易にスクールを選んでしまうと、「全然技術が身につかなかった」「失敗だった」「大金を無駄にした!」となってしまうかもしれません。くれぐれも慎重に行動してください。
「国土交通省認定」の資格があるのか?
よくドローンスクールの広告に「国土交通省認定の資格」とありますが、今はまだ認定はありません。認定ということは認めているということです。認めているのであれば、それは「免許」と同じです。まだ日本にはドローンを操縦するための免許はありません。だから、国が認めた資格はないのです。今度、知り合いの国交省の職員に聞いて、確かめてみますね。「本当に一部のドローンスクールだけ、国が認めているのか?」と。
ちなみに、国土交通省のホームページを見ると、ドローンスクールの一覧が載っているページがあります。しかし、それは「認定」ではありません。国交省も、「ただ掲載しているだけで『認定』はしていない」と言っています。一定の条件を満たしていれば、どのドローンスクールでも掲載されます。なので、もしかしたら一部のドローンスクールは、ただ「掲載」されているだけなのに、それを「認定」と言っているのかもしれません。こうした表現には注意してください。
「国家資格が得られる」と言っているところもあるが?
現在、マルチコプター(ドローン)に関する国家資格はありません。これは、私が言うよりも、国土交通省のホームページを見れば一目瞭然です。そこには一言も、「マルチコプターを飛ばすのに国家資格が必要です」とは書かれていません。こうした表現にも注意してください。
資格の更新時に費用がかかるのはおかしい
ドローンスクールによっては、資格の更新があったり更新時に費用がかかるところもあるようですが、それはおかしいです。そういう資格は、免許のような公的なものではありません。生徒から更新料を取って、そんな資格を持ち続けさせて、何の意味があるのでしょうか。
更新料を取るなら、定期的にマルチコプター(ドローン)の操縦に関する能力テストをしていないとおかしいです。資格取得後、一定期間を過ぎたら資格に見合った能力が保たれているかをチェックしたり、必要なら再テストをしたりする。そうして、今後もその生徒が資格を持ち続けていいかどうかを確かめる。それならわかります。なにせ「資格」というくらいですから。
ちなみに、私のドローンスクールには資格の更新はありません。更新料も取っていません。しかし、生徒が技術を一定のレベルに保てるようなサービスはあります。例えば、しばらく機体を操縦していない生徒に対して再テストが受けられるようしたり、定期的に機体を飛ばせるクラブを設けたりしています。こうしたサービスもなく、ただ更新料だけを取るのは怒りを覚えます。「生徒を何だと思ってるんだ!」と言いたくなります。考えものです。
資格はスキルの証明にはならない
資格があっても、技術に対する信頼はありません。全国にドローンスクールは200~300校あるみたいですが、教えているカリキュラムは全然違います。どのスクールに通ったかによって身につく能力は全然違います。だからこそ、資格だけでは技術の証明にならないのです。
以前、このようなことがありました。私が自分の店で小さなマルチコプター(ドローン)を飛ばしていると、お客さんが「それ、僕も飛ばしてもいいですか?」と言ってきました。
「えっ、いいですけど。難しいですよ?」と私。
「大丈夫です。僕、○○のドローンスクールを出て、資格も持っていますから」
「そうですか……」と言って、私はその人に機体を貸しました。しかし、その人はすぐに「バーン!」と壁にぶつけ、墜落させてしまいました。
「あれ、このドローンおかしいですね?」
「いやいや、おかしくなんかありませんよ」
「おかしいですよ。空中で止まらなかったです」
「いやいや、この機体、何もセンサーが付いていないので、止まらなくて当たり前です。自分の指先でコントロールして止めるのです。それができなければ、プロとは言えませんよ」そんなやり取りがありました。
しまいには、「壊すからもう止めてください」と言って、中止してもらったくらいです。だから、「資格を持っています」は信用ができません。
資格があっても、仕事はできません。仕事はスキルでするもので、資格でするものではないからです。実際、資格だけで仕事がもらえるなら、もっと日本の空はマルチコプター(ドローン)が飛んでいてもおかしくありません。しかし、ほとんど見ないでしょう。その理由は、多くの人が資格は持っていても、現場で通用する飛ばし方ができないからです。
資格があっても、その人がどれだけ飛ばせるかはわかりません。例えば、他のドローンスクールを卒業し、資格を持った人が、仕事を求めて私のもとに来ることがあります。そのときは、必ず知識や技術を見せてもらいます。「どこそこのドローンスクールを卒業して資格を取りました。だから仕事を紹介してください!」と言われても、実際にお任せした結果、機体を落としちゃいました、事故を起こしちゃいましたでは済みません。みんな、「資格」の意味を簡単に考えすぎなのです。本来、資格があるということは「それ相応の知識と技術がある」ということです。相応の能力があれば仕事はできます。ぜひとも、「仕事ができる能力」が身につくドローンスクールを見つけてくださいね。資格を目的に通うことほど意味のないことはありませんので。
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